カナダ、米国との広範な関税交渉促進のためDSTを撤回
(カナダ、米国)
調査部米州課
2025年07月02日
カナダ政府は6月29日、米国とより広範な貿易交渉を進めるため、6月30日から徴収を予定していたデジタルサービス税(DST)を撤回すると発表した。この決定に伴い、カナダのマーク・カーニー首相と米国のドナルド・トランプ大統領は7月21日までの合意を目指して、貿易協議を再開することで一致した。また、カナダ政府はこの撤回を法制化するためのDST法改正案も提出する予定と発表した。
トランプ氏は6月27日、カナダがDSTを課すことを発表したとして、カナダとの関税交渉の終了を示唆していた(2025年6月30日記事参照)。
カナダは2024年に国内外の企業に対し、カナダのユーザーから得たデジタルサービス収入に3%課税するDSTを導入し、2025年6月30日が最初の納付期限だった。
米国通商代表部(USTR)はこれまでも、DSTがカナダ企業を除外し、米国企業を標的にしていると指摘してきた(2025年4月7日記事参照)。また、カナダに対し、2024年末までに新たなDSTまたは類似の措置を課さないというOECDの合意に加わるよう求めていた。
一方、2024年6月にDSTが導入されたことで、USTRは同年8月に、DSTについて、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注)に基づく紛争解決協議を要請するなど(2024年9月2日記事参照)、両国間の大きな問題となっていた。
今回の発表に関し、カーニー首相は「カナダと米国との新たな経済・安全保障関係に関する交渉で、カナダの新政権は常に、あらゆる合意がカナダの労働者と企業の最善の利益にどれほど貢献するかを指針とする」とのコメントを発表した。
なお、5月9日に合意に至った米英通商交渉では、DSTは撤廃されず、ジェミソン・グリアUSTR代表が不満を漏らしていた(2025年5月9日記事参照)。また、バイデン前政権はOECD合意を根拠にカナダのDSTを批判していたが、トランプ氏は1月20日にOECDの国際課税ルールからの離脱を発表している(2025年1月24日記事参照)。
(注)米国ではUSMCA、メキシコではT-mecと呼ばれる。
(谷本皓哉)
(カナダ、米国)
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