米アルティウムセルズ、テネシー州のEV用バッテリー製造施設を改修、LFPバッテリー生産拡大へ
(米国、韓国)
アトランタ発
2025年07月15日
米国のゼネラルモーターズ(GM)と韓国のLGエナジーソリューション(LGES)の合弁会社アルティウムセルズ(本社:オハイオ州)は7月14日、テネシー州スプリングヒルにあるバッテリーセル製造施設を改修し、低コストのリン酸鉄リチウムイオン(LFP、注1)バッテリーセルの生産を拡大すると発表した。既存のNCMA(注2)バッテリー生産ラインのLFPセル生産ラインへの転換は2025年後半に開始し、2027年後半には商業生産開始を見込む。なお、同社のオハイオ州ウォーレンの製造施設ではNCMAの生産は継続する。
アルティウムセルズは2021年4月、約23億ドルを投じてスプリングヒルでの電気自動車(EV)用新型電池のアルティウムバッテリー(注3)製造施設建設を発表し(2021年4月19日記事参照)、同施設では2024年3月から、隣接するGMのスプリングヒル組立工場で生産するキャデラック・リリックなどに使用するEV用バッテリーセルの生産を開始している。今回の改修は初期投資の約23億ドルから賄う。
発表によると、今回の改修により、高ニッケル、将来のリチウムマンガンを主体としたバッテリーソリューションを補完し、成長を続けるEVポートフォリオの多様化を推し進めることが可能になるという。GMのバッテリーセルパック部門のカート・ケルティ副社長は2024年10月、米ミシガン州で開催された北米バッテリーショーで、EV市場の勢いが弱まる中、コスト削減のために、NCMAバッテリーに加え、より安価なLFPバッテリーをラインアップに加えることを表明していた(2024年10月18日記事参照)。
S&Pグローバル・モビリティーの自動車情報部門アソシエートディレクターのステファニー・ブリンリー氏によると、複数種類のバッテリーを同一施設で生産することで、GMはEV需要の変化に柔軟に対応でき、幅広いEVポートフォリオに最適な選択肢を生み出すこが可能となるという(デトロイトフリープレス7月14日)。
なお、GMとLGESは2025年5月、GMのEV型ピックアップトラックと大型のスポーツ用多目的車(SUV)向けに、新たに開発したリチウムマンガンリッチ(LMR)角型バッテリーセルの量産を進めることを発表し、アルティウムセルズが2027年末までに、LGESの施設でLMR角型バッテリーセルの試験生産を開始することを明らかにしている(2025年5月15日記事参照)。
(注1)正極材がリチウム、リン、鉄から構成される二次電池のこと。現在多く使用されているニッケル、マンガン、コバルトを利用したNMCバッテリーに比べ、航続距離は短いが、コストは安いという利点がある。
(注2)正極材がリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムから構成される二次電池のこと。
(注3)GMが開発したアルティウムバッテリーは、バッテリーパック内に大容量のパウチ型セルを垂直、または水平に積み重ねられる点が特徴。これによって、車両デザインに合わせて最適な配置が可能となり、蓄電容量を最大化できる。最大充電時には450マイル(約720キロ)以上の走行が可能となる。なお、GMは2024年の投資家向け説明会で、バッテリー製造アプローチ転換の一環として「アルティウム」の名称廃止を発表した。
(横山華子)
(米国、韓国)
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