2024年北米バッテリーショー、規模を拡大してデトロイトで開催
(米国)
ニューヨーク発
2024年10月18日
北米バッテリーショーが10月7~10日、米国ミシガン州デトロイト市で開催された。会場を2023年までのデトロイト郊外から(2023年9月22日記事参照)、面積の広い市内の展示会場に移し、規模を拡大して開催された。出展企業数は、2023年の約800社から1,150社に増え、来場者数も同年を超える約1万9,000人が見込まれている。
会場では、計235人のスピーカーによるセミナーが同時に開催され、電気自動車(EV)市場の見通しや、各国のEV普及政策、バッテリー技術のトレンドなど、幅広い議論が行われた。その中で、自動車専門サイトのワーズオートのアダム・ラゴジーノ首席アナリストは、「EV不振といわれる中でも、バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)は着実に成長している」と述べ、2030年代初頭には、世界におけるシェアはガソリン車(ICE)を上回るとの見通しを示した。また、2024年11月5日の大統領選挙に関しては、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領による、米国での中国製造業者による生産を許可する発言を評価するとした。「米中の合弁事業は生産と雇用をもたらし、知識と技術が移転される観点から理にかなっている」と述べた。一方で、トランプ氏が提案する対中追加関税の引き上げに関しては、金利上昇につながるとの見方から、自動車販売にマイナスの影響を与えると指摘した。また、EV新興メーカーのリビアンのクリス・ネバース公共政策シニアディレクターは、インフレ削減法(IRA)における税額控除プログラムに関して、バッテリーが中国産の材料や部品に大きく依存していることが十分に考慮されていなかった点を指摘し「規制の方向は正しかったが、実施まで拙速で、積極的過ぎたかもしれない」と述べた(注1)。さらにバッテリー技術に関しては、ゼネラルモーターズ(GM)のバッテリーセル・パック部門のカート・ケルティ副社長が、EV市場の勢いが弱まる中、コスト削減のために、LGエナジーソリューションとの合弁会社が現在生産しているNCMA(注2)バッテリーに加え、より安価なリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP、注3)をラインアップに加えると発言。NCMAのブランド名である「アルティウム」を取り下げると発表した。LFPの国内生産の動向は今回の重要テーマの1つに取り上げられており、今後の展開が注目される。
日系企業20社がジェトロ視察プログラムに参加
2023年に引き続きジェトロは、バッテリーショー視察プログラムを主催し、日系企業20社からの参加を得た。参加者は10月8日から2日間、日・米系企業25社以上の出展ブースを訪問し、各社代表者からの事業概要や現在の市場動向などについて情報交換を行った。会期中にはミシガン州のグレッチェン・ウィットマー知事(民主党)と視察団の面談も実現し、同知事は「これだけ大きな日本の視察団をバッテリーショーに送ってくれたことに心から感謝する。ミシガン州にとって日本企業の投資は国別でみた直接投資の中で最大であり、その存在感は極めて大きい」とコメントした。
(注1)税額控除の対象車両となるためには、車両やバッテリーサプライチェーンにおける一定の条件が付されている。2024年7月時点で、対象車両は全クリーンビークル(BEV、PHEV、燃料電池車の合計)の2割弱となっている。
(注2)正極材が、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムから構成される二次電池のこと。
(注3)正極材が、リチウム、リン、鉄から構成される二次電池のこと。現在多く使用されているニッケル、マンガン、コバルトを利用したNMCバッテリーに比べ、航続距離は短いがコストが安いという利点がある。
(大原典子)
(米国)
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