ルクセンブルク成長戦略の要のスパコン、MeluXinaの活用状況を聞く
(ルクセンブルク、日本、EU、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン)
ブリュッセル発
2025年07月18日
ルクセンブルクは、欧州の人工知能(AI)のイノベーションを促す「AIファクトリー」(2025年6月11日記事参照)や、量子コンピュータの設置場所として選出される(2025年7月4日記事参照)などで、注目を集めている。6月に開催された国内最大級のテックイベント「NEXUS」(2025年7月14日記事参照)で、スーパーコンピュータ(スパコン)「MeluXina」の運用を行うルクスプロバイドの最高顧客責任者(CCO)のパイス・フィリペ氏に話を聞いた(6月18日インタビュー)。
パイス氏によると、Meluxinaは商業用に特化し、安全性とレジリエンスを重視している。主な対象産業は金融、グリーン経済、宇宙、サイバーセキュリティーで、データの安全性が重視される知的財産権(IP)保護などが確保された状態で、複雑な計算や大規模なデータ処理ができる。
利用企業には、風力発電向けの気象情報解析を行うwhiffle(オランダ)や、生成AIを活用し、法令やコンプライアンス違反などを検出するCysana(ドイツ)などがある。日本市場のニーズに合致する分野の一例として、保険金の支払いを正確に予測する保険サービスを挙げた。
また、同社は国内外の創業5年以内のスタートアップ向けに、最長6カ月までMeluXinaを無料で利用可能なプログラムを有している。ニーズは多岐にわたるため、各社に合った利用計画のコンサルティングサービスも提供する。
欧州委員会はスタートアップのスパコン活用を視野に入れたAIファクトリーを立ち上げ(2024年2月1日記事参照)、2026年までに最低15カ所の稼働を目指している(添付資料表参照)。
世界のスパコン性能ランキングトップ500(2025年6月)によると、MeluXinaは136位だ。EU域内ではドイツ、フランス、オランダ、スペインなどのスパコン129件がランクインしている。政治専門紙「ポリティコ」によると、スパコンは設備の維持費が課題だ。収益性の高いビジネスモデルを持つ米国のマイクロソフトやグーグルなど、大手テック企業と協業するAIスタートアップが多いが、欧州に同様の大手テック企業がいないのも課題と指摘している。
ルクセンブルク商工会議所(2022年10月11日記事参照)は7月、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に合わせ、宇宙やヘルステック関連の経済ミッションを派遣している。パイス氏も日本のスタートアップなど新規顧客開拓を目指して参加している。
ルクスプロバイドの最高顧客責任者パイス・フィリペ氏(右、ジェトロ撮影)
(大中登紀子、大河原楓)
(ルクセンブルク、日本、EU、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン)
ビジネス短信 02c1ed2e73881c74