米商務次官、輸出管理の執行強化へ予算増額を要請、下院公聴会で

(米国)

ニューヨーク発

2025年06月17日

米国連邦議会下院外交委員会の南・中央アジア小委員会は6月12日、商務省産業安全保障局(BIS)の2026年度予算案に関する公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開催した。輸出管理政策を中心に、ジェフリー・ケスラー商務次官(産業安全保障担当)が証言した(注1)。

ケスラー氏は、BISがトランプ政権下で輸出管理の厳格化と合理化、抜け穴を塞ぐことに取り組んでいると強調した。実績として、2025年3月に中国やイランなどに所在する80の事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加した事例(2025年3月26日記事参照)などを挙げた。また、「全て(の輸出管理違反の事案)を捕捉できていないことに懸念を抱いている」と述べ、BISの体制強化に向けた予算増額の必要性を訴えた。

ケスラー氏によると、BISの2026年度予算案は過去最大の3億300万ドルで、前年度からの増額分により、輸出管理違反に関与した個人の逮捕と起訴を担当する輸出執行特別捜査官を約200人採用、外国に配置する輸出管理官(ECO)を12人から30人に増員、BISの執行活動を支援する専門エンジニアなどを採用できると説明した。小委員長のビル・ホイジンガ下院議員(共和党、ミシガン州)は、こうした提案に対して「必要なステップだ」と述べたほか、少数党筆頭委員のシドニー・キャマラガー・ドーブ下院議員(民主党、カリフォルニア州)も、BISと議会との連携強化を促し、「予算増額を歓迎する」と述べた。

輸出管理は強固さ維持と強調

ケスラー氏はまた、冒頭証言の後、米中通商協議のいわゆるロンドン合意に関して(2025年6月13日記事参照)、米国の対中輸出管理措置に関する合意内容を尋ねられたのに対して、両政府が交渉中としてコメントを避けた。一方で、「(米国の)輸出管理は強固であり、今後も強固なまま維持されることを確信している」と強調した。

湾岸諸国に対する米国製の人工知能(AI)半導体の販売合意に関して(2025年5月30日記事参照)、各国経由で中国に流出する懸念を尋ねられたのに対しては、BISが輸出認否を判断すると述べた。また、米国の技術が各国のAIインフラの基盤となることで、他国の市場参入機会を制限することになり、米国の競争力の維持につながるとの意義も説明した。

AI拡散規則を撤回(2025年5月15日記事参照)した理由を尋ねられたのに対しては、同規則が「過剰な規制だった」「一部の国を優遇し、他国を不遇する恣意的な区別を設けるものだった」などと説明した。

輸出管理措置の国際的な連携に関しては、一定の進展が見られたと述べつつ、まだ不十分との認識を示し、「米国の輸出管理措置と外国の措置の一致が不可能な場合には、外国直接製品(FDP)ルール(注2)の適用を検討すべきだ」と指摘した。

(注1)ケスラー氏の略歴や冒頭証言は下院リポジトリ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注2)FDPルールは、米国製のソフトウエア・技術を用いて米国外で生産された製品に対して、輸出・再輸出・国内移転する際に事前の許可申請を求める規則。

(葛西泰介)

(米国)

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