カナダ中銀、政策金利を2.75%に据え置き、2会合連続

(カナダ)

トロント発

2025年06月06日

カナダ中央銀行は6月4日、政策金利を2.75%に据え置くと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(政策金利レート推移参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。金利の据え置きは前回に続いて2会合連続だ(2025年4月17日記事参照)。

中銀は政策金利据え置きを決定した理由として、依然として不確実性が続く状況下、カナダ経済は軟調ながらも急激な減速には至っておらず、インフレ指標にもある程度の堅調さが見られる点を挙げている。こうした状況を踏まえ、米国の貿易政策やカナダ経済への影響について、さらに情報を収集して見極める必要があると判断した。

景気に関しては、トランプ米政権による関税発動を見越した米国の駆け込み輸入の増加を受けて、カナダの輸出が急増し、2025年第1四半期(1~3月)のGDP成長率は前期比年率2.2%と予想を上回った(2025年6月4日記事参照)。ただ、家計と企業の支出は底堅さを見せているものの、国内最終需要が横ばいだったことや、慎重姿勢が続くことが想定され、国内支出は引き続き抑制されると予想している。第1四半期の輸出と在庫の前倒しが将来の成長を先取りしている状況から、第2四半期(4~6月)はさらなる減速が見込まれる。

また、労働市場も弱含みで、雇用は貿易依存度の高い業種を中心に減少がみられ、4月の失業率は6.9%に上昇した(2025年5月14日記事参照)。現時点では、貿易の影響を受けにくい業種では雇用が維持されているが、企業は総じて採用を縮小する意向を示していると述べた。

一方、4月のインフレ率が1.7%に低下したことについては(2025年5月22日記事参照)、連邦消費者炭素税の廃止によるもので、税を除いたコアインフレ率は2.3%上昇で、中銀の予想を上回ると分析している。背景には、食料品を含む商品価格の上昇や、貿易摩擦による影響を反映している可能性を指摘した。多くの企業が代替供給先の確保や新規市場の開拓に伴うコスト上昇に直面しているとの報告を受けているという。

今回の発表を受けてトロント・ドミニオン銀行の調査部門TDエコノミクスのディレクター兼シニアエコノミストのレスリー・プレストン氏は同日、「中銀の政策理事会メンバーは、経済が弱まりインフレが抑制されれば、政策金利の引き下げが必要になる可能性があるとみている。また、米国の関税政策の見通しが不透明なことで、先見性が低い状況にあり、トランプ米政権との貿易交渉で奇跡的な成果が生まれない限り、カナダ経済は今年(2025年)、景気後退に陥る可能性が高く、さらなる利下げが必要になる」と述べた(TDエコノミクス6月4日)。

中銀の次回の政策金利と、経済見通しを示す中銀の金融政策報告書の発表は7月30日に予定されている。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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