多数の米国業界団体が、追加関税措置で生じるサプライチェーン混乱への対応を政府に要請
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月23日
米国の輸入業者、輸出業者、輸送事業者およびサプライチェーンに関係する業界団体が6月17日、運輸省のショーン・ダフィー長官、商務省のハワード・ラトニック長官、連邦海事委員会のルイス・ソラ委員長宛てに、今後予想される港湾混雑とサプライチェーンの混乱へ対処するよう、産業界との協力を要請する書簡(添付資料参照)を連名で送った。書簡には、米国商工会議所、全米小売業協会(NRF)、全米外国貿易評議会(NFTC)など主要な団体を複数含む、100を超える業界団体が署名した。米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(6月18日)が報じた。
書簡では、特に中国に対する関税措置の変更が、新型コロナウイルスのパンデミック時に直面した港湾混雑、船舶容量やコンテナの不足、運賃の高騰、出荷遅延など、深刻なサプライチェーン課題の再発を招く懸念が強くあると指摘した。中国に対する相互関税率は一時125%まで引き上げられたが、米中両国の協議によって、5月14日から90日間停止され、現在はベースライン関税の10%が適用されている。また、国際郵便ネットワークを通じて中国または香港から出荷された輸入申告額800ドル以下の少額貨物に対する関税率は、120%から54%に引き下げられた(2025年5月14日記事参照)。
書簡では、追加関税率が引き上げられた際、多くの企業が米国に輸入する注文を一時停止またはキャンセルしたため、中国から米国へ向かう船舶が急減し、物流業界全体で人員削減や混乱が引き起こされたと指摘している。一方で、中国に対する追加関税率が緩和されて以降は注文が再開され始め、コンテナの不足と、船会社が船舶配置を再調整する中で発生する船舶容量の制限に直面しており、海上運賃と手数料の急激な上昇が確認されていると指摘した(2025年6月17日記事参照)。
その上で、書簡ではこれらの問題に積極的かつ早期に対応するため、サプライチェーン混乱対策タスクフォース(SCDTF)の再編成を要請すると述べた。SCDTFは、サプライチェーン強靭(きょうじん)化諮問委員会がバイデン前政権下の2024年12月に発表した「2021~2024年サプライチェーンレビュー」報告書において、新型コロナウイルスのパンデミックによるサプライチェーンの混乱に対して、連邦政府、州政府、民間企業などとの連携を強化して解消した、と評価されている(2024年12月20日記事参照)。
米国では追加関税導入前の駆け込み需要により、2025年1~3月の輸入額が拡大し、3月には月間の貿易赤字額が過去最高を更新した(2025年5月8日記事参照)。一方で、輸入コンテナ量は2025年後半から落ち込む見込みだ(2025年6月16日記事参照)。4、5月は追加関税を回避する動きから、例年のように新学期用商品やホリデーシーズンに合わせた拡大には至らず、貨物量は不規則に変化している。
(赤平大寿)
(米国)
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