小売業者向け輸入コンテナ量、関税引き上げ一時停止中に増加も、2025年後半は大幅減少の見通し
(米国)
ニューヨーク発
2025年06月16日
全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」(6月9日)によると、4月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は、前月比2.9%増、前年同月比9.6%増の221万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。
今後の見通しでは、5月は前年同月比8.1%減の191万TEUと見込まれ、2023年9月以来初の前年比減少となり、2023年12月の187万TEU以来の低水準に落ち込むと予想されている。NRFのサプライチェーン・税関担当副会長のジョナサン・ゴールド氏によると、トランプ政権が4月に145%の対中関税(2025年4月11日記事参照)を導入したことにより、多くの小売業者が注文を中断またはキャンセルした影響が反映されると説明した。しかし、その後、関税率を大幅に引き下げることに合意(2025年5月13日記事参照)したことに伴い、多くの小売業者が輸入を再開しているもようだ。特に、相互関税の一時停止期間に当たる6月から8月にかけての輸入量は回復すると予想されている。もっとも、2024年の水準を大きく下回る数字にとどまる見通しで、6月は6.2%減の201万TEU、7月は8.1%減の213万TEU、8月は14.7%減の198万TEUと予想している。2025年の残りの期間は、2024年後半に米東海岸とメキシコ湾岸の港湾スト(2024年10月7日記事参照)の懸念から輸入が増加していたこともあり、9月は前年同月比21.8%減の178万TEU、10月は同19.8%減の180万TEUと、前年比で大幅な減少が予想されている。
ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏によると、通常秋に行われるホリデーシーズン用商品の輸入時期が、90日間の相互関税発動の猶予期間を活用するため前倒しされ、通常4月から5月に行われる新学期シーズン用商品の輸入時期が4月に行われた関税引き上げの影響によって後ろ倒しにされた結果、2025年は6月から8月が両方のシーズンの輸入時期のピークとなる見込みとの見方を示している。
ドナルド・トランプ大統領は6月11日のSNS投稿を通じて、「中国との合意が成立した」と宣言し、米国は中国に対して55%の関税を課し、中国は米国に10%の関税を課すと述べた(2025年6月13日記事参照)。関税はなお高い水準にあり、インフレ再燃に伴って個人消費を圧迫する可能性や、企業収益の低下に伴って労働市場が減速する可能性などから、景気減速の懸念が高まっている。
(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。
(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。
(樫葉さくら)
(米国)
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