トランプ米大統領への支持率は維持されるも、関税政策には懐疑的、世論調査
(米国)
調査部米州課
2025年05月21日
米国トランプ政権の関税政策の影響で、2025年3月の貿易赤字額が過去最高を記録し、今後は価格転嫁の動きも予想される(2025年5月8日記事参照)。最近の世論調査では、低下傾向にあるドナルド・トランプ大統領の支持率が大きく下がることはなかったが、関税政策については過半が経済への悪影響を懸念している。
ハーバード大学米国政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスは5月19日、トランプ政権などに関する世論調査結果(注1)を発表した。それによれば、トランプ氏の支持率は47%と4月(48%)から1ポイント低下した。
トランプ氏の関税政策が経済を「損なう」とする割合は57%で、「活性化する」(43%)を上回った。トランプ政権の各政策の支持率をみると、「米国製造業を奨励するため、中国、メキシコ、カナダからの製品に関税を課す」への支持は49%と下位で、15項目中14位だった。
支持率が高い政策として上位に挙がった項目は、「メディケア受給者と低所得者層の処方箋薬の価格を引き下げる」(84%)、「不法滞在で罪を犯した移民を国外追放する」(78%)、「政府支出における不正行為と無駄遣いを発見し、排除するための本格的な取り組みを実施する」(71%)だった。
経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブが5月に実施した世論調査(注2)によれば、トランプ政権の減税法案への不支持が43%と支持(36%)を上回った。減税法案が財政赤字に与える影響については、「赤字を増やす」が37%と最も高く、「分からない」(26%)、「赤字を減らす」(21%)、「赤字に変化なし」(16%)が続いた。
なお、ムーディーズ・インベスターズは5月16日、連邦議会下院の共和党が審議を進めている減税法案に含まれるトランプ減税の延長により、米国の財政赤字が増大するなどとして、米国債の格付けをAaaからAa1に引き下げた(2025年5月21日記事参照)。
関税の価格転嫁は6月からと予想
イェール大学予算研究所の経済学ディレクター、アーニー・テデスキ氏は、関税の価格への転嫁は6月からと予想している。また、4月に生産者物価指数が下落した(注3)ことに注目し、その理由の1つは、小売業者と卸売業者の利益率が低下したことで、関税コストの一部を吸収している可能性があるという(PBSニュース5月19日)。
クリントン政権で労働長官を務めた経済学者のロバート・ライシュ氏は、トランプ政権の関税政策が米ドルと国債に支えられた米国の覇権を終わらせる可能性を示唆した。関税の負担によって全ての消費者が貧しくなり、特に低所得層への負担が大きくなることも指摘した(CNBC5月19日)。
(注1)実施時期は2025年5月14~15日。対象者は全米の登録有権者1,903人。
(注2)実施時期は2025年5月16~19日。対象者は全米の成人1,710人。
(注3)労働省の発表によれば、2025年4月の生産者物価指数は前年同月比マイナス0.5だった。1~3月のデータは、0.7、0.2、0.0。
(松岡智恵子)
(米国)
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