バンス米副大統領、インド首相との会談で貿易交渉の進展を歓迎

(米国、インド)

ニューヨーク発

2025年04月24日

米国のJ.D.バンス副大統領は4月21日、インドのナレンドラ・モディ首相とニューデリーで会談し、2国間貿易協定(BTA)交渉の「重要な進展」を歓迎するとともに、ホワイトハウスの記者会向けに声明として交渉枠組みの最終化を正式に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。BTAは、両国の雇用創出と市民の福祉促進を重視した新たな現代の貿易協定で、均衡がとれた互恵的な2国間貿易とサプライチェーンの統合強化を目的とする(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」4月21日)。米国通商代表部(USTR)が発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国側の交渉目標には、市場アクセスの拡大、関税・非関税障壁の削減などが含まれる。

ドナルド・トランプ大統領とモディ首相は2月に米国の首都ワシントンで首脳会談を実施しており、両国の「包括的グローバル戦略パートナーシップ」の強化を再確認するとともに、新たなイニシアチブ「21世紀の米印コンパクト(COMPACT)」を立ち上げ、2025年秋までにBTAの第1段階の交渉を行うことなどで合意していた(2025年2月17日記事参照)。今回のバンス副大統領とモディ首相による会談は、この首脳会談に続くものとなっている。

USTRのジェミソン・グリア代表も同日、声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、USTRとインド商工省が交渉を担うことを歓迎した。一方でグリア代表は、「インドとの貿易関係には、相互主義の深刻な欠如が存在している」とも指摘し、「継続的な協議は、米国製品の新市場を開拓し、米国労働者に損害を与える不公正な慣行に対処することで、均衡のとれた相互主義を実現する」と述べた。USTRによれば、インドとの貿易障壁により、2024年の米国のインドに対する財貿易の赤字額は457億ドルで、2023年から5.1%(22億ドル)増加した。また、米国の平均実行関税率は3.3%である一方、インドは17%と世界の大国の中でも最も高い水準の1つで、特にインドの農業製品に対する平均実行関税率が39%と高いと指摘している。

トランプ氏は4月2日、全ての国から輸入される実質的に全ての品目に10%の追加関税を課すベースライン関税と、米国の貿易赤字額が大きい57カ国・地域に対して、より高い追加関税を課す相互関税を発表した。相互関税は7月9日まで、中国を除き適用が停止されているが(2025年4月11日記事参照)、インドに対しては26%が設定されている(2025年4月7日記事参照)。ただ、通商協定に詳しい専門家は「インドは第1段階の交渉妥結時期を秋ごろとしているが、相互関税の適用停止期限を過ぎており、BTAと相互関税との関係性は不透明」だと指摘している。

なお、USTRは「米国第一の通商政策」の調査において、米国第一の通商協定の交渉に適した国やセクターを特定したと報告していた(2025年4月7日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、インド)

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