習主席が12年ぶりマレーシア訪問、協力深化と多国間貿易体制の維持確認
(マレーシア、中国)
クアラルンプール発
2025年04月18日
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は4月16日、同国を公式訪問した中国の習近平国家主席と会談し、翌17日に「ともに未来を共有するハイレベル戦略共同体構築に向けた共同声明」を発表した。中国とマレーシアは、2013年に包括的戦略パートナーシップを確立し、2024年には国交樹立50周年を迎えた。習国家主席のマレーシア訪問は、両国が戦略的パートナーシップ関係に格上げされた2013年以来。同氏はイブラヒム国王の招待を受け、4月15日から17日まで滞在し、国王およびアンワル首相ら政府高官と個別に会談した。
声明では、戦略的パートナーシップを深化させ、さまざまな分野における協力を強化することで一致。両国は相互に、緊密な隣国かつ共に発展するための誠実なパートナーであり、地域の平和と繁栄に大きく貢献する国と位置付け、近代化の支援と相互発展の促進に重点を置きつつ、共通の未来を志向するハイレベルの共同体を構築することを確認した。習国家主席の訪問に際し両国政府は、外交・防衛共同対話メカニズムの設置や、東海岸鉄道など主要インフラ事業の促進、人工知能(AI)、農産物の対中輸出などを含む31の協力覚書に署名した。
包摂的な多国間貿易体制の維持推進を確認
米中間で関税をめぐる応酬が激化する中、声明で両国は、国連やWTOなど国際枠組みの下での協調と協力を強化し、国際的な公平性と正義をともに順守することを確認した。この文脈で中国は、マレーシアをBRICSのパートナー国として歓迎し、同国がBRICS体制により良く統合されるよう積極的に支援すると表明。マレーシア側も、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への中国の加盟をあらためて歓迎した(2021年9月27日記事参照)。
また双方は、普遍的に利益をもたらす包摂的な経済グローバル化、および貿易投資の円滑化を推進するとともに、「WTOルールに反する、恣意(しい)的な関税引き上げを含む一方的な貿易制限措置に反対する」と明記し、名指しはせず米国を批判した。その上で、「WTOを中核とする、ルールに基づき、無差別で、開放的、公正、包摂的、衡平かつ透明性ある多角的貿易体制の維持に尽力する」と強調した。4月16日にアンワル首相が行った演説でもマレーシアは、「多国間主義が大きな危機に直面」「一部の国が責任共有の原則を放棄」と状況を総括し、世界が堅実性、信頼性、目的意識を切望する中、中国のグローバルな取り組みは希望を与えていると評価した。
(吾郷伊都子)
(マレーシア、中国)
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