米USTR、メキシコ政府にアルミ製品メーカーの労働問題の確認要請、トランプ政権下で2件目

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年04月18日

米国通商代表部(USTR)は4月16日、メキシコ国内の自動車部品向けアルミニウム製品メーカーの製造施設での労働問題を巡って、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。第2次トランプ政権発足後のメキシコ政府に対する労働問題の確認要請は、4月3日に自動車部品メーカーの製造施設に関する事案(2025年4月4日記事参照)に続いて今回が2件目で、4月に措置が連続したかたちだ。

USMCAに設けられた「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」は、締約国内の事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで(注1)、労働権侵害の事実が確認されれば、USMCA特恵措置の適用停止などの罰則が科され得る。RRMに基づく労働権侵害の事実確認要請は、締約国政府が独自に開始できるが、労働組合などの第三者機関が締約国政府に対して事実確認要請を行うよう申し立てることも可能だ。

今回の事案では、2025年3月に、メキシコ国内の労働組合から米国政府に対して、自動車部品向けアルミニウム製品メーカーのモダン・メタル・アロイズのメキシコ中央部ケレタロ州の製造施設で労働権侵害があったとして、メキシコ政府にRRMに基づく事実確認要請を行うよう申し立てがあった。USTRは、「労働権侵害の事実を示す信頼に足る証拠があった」として、メキシコ政府に事実確認を要請した。また、米国は今回の事実確認要請をもって当該施設からの製品の輸入について、労働問題の解決に両国が合意するまで最終的な関税の精算を留保できる。実際に、ジェミソン・グリアUSTR代表は、スコット・ベッセント財務長官に対してこの措置の適用を通達した。

なお、トランプ政権は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、USMCAの原産地規則を満たさないメキシコ産品に対して25%の追加関税を課している(2025年3月7日記事参照)。また、1962年通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品(2025年4月7日記事参照)および自動車・自動車部品(2025年4月3日記事参照)に対して、25%の追加関税を課している(注2)。

(注1)ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。

(注2)このほか、商務省は、銅・木材(2025年3月14日記事参照)、半導体・医薬品(2025年4月15日記事参照)に関する追加関税などの輸入制限措置の発動に先立つ232条に基づく調査を実施している。さらに、ドナルド・トランプ大統領は、重要鉱物に関する232条に基づく調査を開始することを商務省に指示する大統領令を発令している(2025年4月16日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

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