米有力シンクタンク、日米関係や日米関税協議の状況を議論
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年04月30日
米国のシンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は4月28日、首都ワシントンで「米日関係の見通し」と題したセミナーを開催した。CSISのジョン・ハムレ所長が開会あいさつを行い、小野寺五典衆議院議員、小泉進次郎衆議院議員、CSISのクリスティ・ゴベラ日本部長(モデレーター)がパネルディスカッションを行った。
パネルディスカッション、左から小泉議員、ゴベラ日本部長、小野寺議員(CSIS提供)
ハムレ所長は「ワシントンで広がる、同盟国によって米国が被害を被っているかのような考えには同意できない」と述べ、現在の世界や米国の経済体制は米国と日本を含めた同盟国間の協力関係を通じて形成されてきたものだとして、同盟国との関係の重要性を強調した。
小泉議員は日米の経済関係について、米国の対内直接投資残高で日本が2019年以降5年連続で国別1位であることや、日系企業が米国内で約100万人の雇用を創出し、うち50万人が製造業の雇用ということなど、具体的な数字を示して米国経済に対する日本企業の貢献を説明した。一方で、小野寺議員は、米国の関税措置(注1)が日本企業の営業利益を圧迫し、対米投資に必要な体力を削ぐことへの懸念も示した。
日米間の関税協議について、小野寺議員は、日本政府は米国政府に関税措置の見直しを訴えていると説明したほか、東アジア情勢を考慮して、安全保障に主眼を移すために、関税措置について早期に収束を図る必要があると述べた。また、米国の関税措置が日本のみならず、アジア各国に負担を強いていると述べ、「アジア各国とこれまで長い間、経済関係を持ち、各国を理解する日本が先頭に立って米国の関税措置の議論をしていく役割がある」として、日本の外交的役割を強調した。
小泉議員は、関税に対する日本の懸念は強いと前置きしつつ、関税協議を通じて日米関係の強固さを再認識する機会でもあると指摘し、ドナルド・トランプ大統領の選挙スローガン「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」を念頭に、「日米同盟を『Make Alliance Great Always(同盟関係を常に偉大に)』にする機会にできると確信している」と述べた。
米国の関税措置のほか、小野寺議員と小泉議員はゴベラ日本部長の質問に答えるかたちで、日本の防衛費増額の状況や、造船分野の日米協力の可能性(注2)、日本の「能動的サイバー防御」に関する法案の動向、研究分野の日米民間交流の重要性、日米が参加する多国間・複数国間の枠組みの方向性など、さまざまな分野について議論した。
(注1)トランプ政権の関税政策は、ジェトロの特集ページ「第2次トランプ政権の動向」、ウェビナー「トランプ政権の関税政策」参照。また、ジェトロと経済産業省は「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を設置し、相談対応と情報提供を行っている。
(注2)トランプ大統領は米国の海事産業基盤の再建に関する大統領令の中で、商務長官に対し、同盟国の造船業者の対米投資を奨励する措置の検討を指示した(2025年4月11日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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