米USTRの知財報告書、メキシコを優先監視国に指定、中国も引き続き問題視
(米国、メキシコ、中国)
ニューヨーク発
2025年04月30日
米国通商代表部(USTR)は4月29日、知的財産権の保護・執行に関する各国の状況をまとめた2025年版スペシャル301条報告書を公表
した。同報告書は1974年通商法182条に基づき、米国企業のビジネスの阻害要因となる、知財保護やその侵害に対する取り締まりなど執行が不十分な国を特定し、懸念が大きい順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定する(注1)。優先国に指定した場合、USTRは当該国の通商慣行について、1974年通商法301条(注2)に基づく調査を開始する。調査の結果、当該国の通商慣行が米国の商業に負担または制限を与えていると判断する場合には、追加関税などの対抗措置を講じ得る。
2025年版報告書では、優先国に指定した国はなかった。優先監視国には、2024年(2024年4月30日記事参照)からメキシコを追加して、アルゼンチン、チリ、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、ベネズエラの8カ国を指定した。監視国には、優先監視国に繰り上がったメキシコのほか、トルクメニスタンを除外し、18カ国を指定した(注3)。なお、過去に優先監視国に指定していたウクライナは、ロシアとの戦争を理由に引き続き評価対象外となった。
USTRは、監視国から優先監視国に繰り上がったメキシコについて、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の知財関連の合意内容を履行していないと指摘した。具体的には、模倣品や海賊版に対する執行措置、著作権や商標権の侵害に対する損害賠償、医薬品関連の知財保護などの分野で、重大な懸念が長年多数存在していると懸念を示した。
また、国別に最多の分量を充てた中国については、知財関連の深刻な懸念が長年存在していると指摘した。米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照、注4)で中国の知財関連の政策や慣行の是正に関する合意内容を全部または一部を履行していないとして、「米国は中国の履行状況を引き続き注意深く監視し続ける」と記した。
(注1)優先国には、米国製品に特に深刻な悪影響を与える政策や慣行を取っている国を指定し、1974年通商法301条に基づく調査の対象となる。USTRは優先国指定を補助するため、知財の保護や執行に特定の問題がある国を優先監視国と監視国に指定している。USTRは優先監視国に1年以上指定している国に関し、当該国の問題解決を支援するための行動計画を策定するよう義務付ける。
(注2)1974年通商法301条に基づく措置には、2018年7月以降に中国原産品に課される追加関税(2024年12月12日記事参照)や、2025年10月以降に中国で建造された船舶の米国港湾への入港などに課される予定の追加料金(2025年4月22日記事参照)がある。
(注3)アルジェリア、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、ブルガリア、カナダ、コロンビア、エクアドル、エジプト、グアテマラ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ、ベトナム。
(注4)USTRは4月に公表した2025年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」の中でも、第1段階の合意における中国の政策や慣行の是正に関する合意内容の履行状況への懸念を示した(2025年4月2日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ、中国)
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