米商務省、東南アジア4カ国製の太陽電池にAD・CVDの賦課を最終決定

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

ニューヨーク発

2025年04月23日

米国商務省国際貿易局(ITA)は4月21日、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4カ国製の太陽電池に対し、アンチダンピング関税(AD)および補助金相殺関税(CVD)を賦課する最終決定を下したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

AD・CVDは、WTO協定で認められた貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた貨物の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。米国政府は2024年4月以降、4カ国製の太陽電池に対するAD・CVDの発動要否を判断する事実確認調査を開始した(2024年5月22日記事参照)。ADについては2024年11月に(2024年12月3日記事参照)、CVDについては2024年10月に(2024年10月3日記事参照)それぞれ賦課が仮決定していた。

今回の最終決定で設定された、4か国製の太陽電池に対する一般的な税率は次のとおり。

  • カンボジア:AD 125.37%、CVD 534.67%
  • マレーシア:AD 8.59%、CVD32.49%
  • タイ:AD 111.45%、CVD 263.74%
  • ベトナム:AD 271.28%、CVD 124.57%

なお、4カ国の特定企業の製品に対しては、個別に税率が設定されており、例えばカンボジア企業4社の製品に対しては、CVDが3,403.96%に設定されている(注)。

AD・CVDの調査~賦課の手続きは、(1)米国国際貿易委員会(USITC)による米国産業の被った損害有無についての仮決定、(2)商務省のダンピングや補助金の有無および税率の仮決定、(3)商務省の最終決定、(4)USITCの最終決定の4段階で進められる。今後、USITCは2025年6月2日までに最終決定を行う見込みで、USITCが賦課に否定的な判断を下した場合には、最終的にAD・CVDは課されない。USITCが賦課に肯定的な判断を下した場合には、最終決定から7日以内に商務省がAD・CVDを賦課する命令を発令する。

今回のAD・CVDが最終的に賦課される場合、既存の関税に上乗せされることになる。4カ国製の太陽光発電製品の米国輸入に対しては、既に(1)1974年通商法201条(セーフガード)に基づく追加関税(2022年2月7日記事参照)、(2)中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVDの回避防止を目的とした、中国製の太陽光発電製品に対するAD・CVD(2023年8月24日記事参照)、(3)国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくベースライン関税(2025年4月10日記事参照)などが賦課されている。

(注)各国・企業別の税率は、ITA発表資料参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(葛西泰介)

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

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