米商務省、東南アジア4カ国製の太陽電池のAD・CVD調査開始

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

ニューヨーク発

2024年05月22日

米国商務省国際貿易局(ITA)は5月14日、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムの東南アジア4カ国製の太陽電池(注1)について、アンチダンピング関税(AD)と補助金相殺関税(CVD)の発動要否を判断する事実確認調査を開始した。5月20日付官報で公示した(AD調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますCVD調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

AD・CVDはWTO協定で認められた貿易救済措置の一種だ。ADは、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、その価格差を相殺する目的で賦課される。CVDは、政府補助金を受けて生産などされた貨物の輸出が輸入国の国内産業に損害を与えている場合に、当該補助金の効果を相殺する目的で賦課される。

米国では、ADが1930年関税法731条以下、CVDが同法701条以下で具体的な調査・発動手続きが規定されている。米国事業者からの申し立てを受けて(注2)、商務省と米国国際貿易委員会(USITC)がそれぞれ事実確認の調査を行った上で、追加関税の賦課判断をする。

今回、米国太陽電池メーカーのファーストソーラー、ハンファQセルズ、ミッションソーラーエナジーが構成する米国連合太陽光製造貿易委員会(The American Alliance for Solar Manufacturing Trade Committee)が4月24日、上記の東南アジア4カ国製の結晶シリコン太陽電池の輸入により損害を受けているとして、AD・CVD調査の申し立てを行った。

USITCは今後、米国の当該産業にもたらされた損害を精査する。商務省は、ADでは当該産品の米国内価格と輸出国内価格を検証し、CVDでは輸出国政府の補助金の存在などを検証する。これら調査を踏まえて、(1)USITCによる仮決定、(2)商務省による仮決定、(3)商務省による最終決定、(4)ITCによる最終決定の4段階で手続きが進められる(注3)。なお、商務省に先立ってUSITCは4月30日に今回の件の調査開始を発表している(4月30日付官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。

今回のAD・CVD調査対象を含む太陽光発電製品の米国輸入に対しては、1974年通商法201条(セーフガード)に基づく追加関税が講じられる一方、東南アジア4カ国からの輸入に対しては、関税が6月6日まで免除されている。しかし、バイデン政権は5月16日、この関税免除措置を延長することなく終了すること、また、中国製品に対するAD・CVD回避を目的とする東南アジア4カ国からの迂回輸入の取り締まりを強化すると発表していた(2024年5月17日記事参照)。

(注1)調査対象は、米国関税分類番号(HTSコード)で8541.42.0010、8541.43.0010、8501.71.0000、8501.72.1000、8501.72.2000、8501.72.3000、8501.72.9000、8501.80.1000、8501.80.2000、8501.80.3000、8501.80.9000、8507.20.8010、8507.20.8031、8507.20.8041、8507.20.8061、8507.20.8091。

(注2)AD・CVDを回避するための迂回貿易に対する調査は、国内事業者の申請がなくとも、商務省による自主調査が可能(2021年9月27日記事参照)。

(注3)商務省は、(2)の段階に当たる仮決定の官報公示と同時に、税関・国境警備局(CBP)に対してADの徴収開始を指示する。仮決定はADで調査開始から140日以内、CVDで調査開始から65日以内に出される。

(葛西泰介)

(米国、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)

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