トランプ米大統領、海産物の競争力強化へ、規制緩和や301条調査検討を指示
(米国)
ニューヨーク発
2025年04月22日
米国のドナルド・トランプ大統領は4月17日、「米国の海産物競争力の回復」と題する大統領令を発表した。漁業における規制緩和と、1974年通商法301条に基づく不公正な外国の貿易慣行の調査検討などを指示している。同日にファクトシート
も発表した。
大統領令では、漁業は「米国で最も規制の厳しい産業の1つ」だとし、漁獲制限や、外国の洋上風力発電企業への漁場の売却などにより、効率的な漁が妨げられてきたと指摘した。さらに、店頭に並ぶ海産物の約90%が輸入品で、海産物の貿易赤字は200億ドルを超えているとし、不公正な外国の貿易慣行による米国の海産物の競争力低下を直ちに是正しなければならないと述べた。その上で、トランプ氏は、生産的な漁の促進、高コストで非効率な規制から漁業者を解放、違法・無報告・無規制(IUU)の撲滅(注1)、不公正な外国の貿易慣行からの海産物市場保護などのため、主に次を指示した。
- 商務長官は、保健福祉長官と協議の上、漁業に対する過剰な負担を課す規制の停止、改正、廃止を直ちに検討する。大統領令の発令日から30日以内に、商務長官は最も過度に規制されている漁業を特定し、規制による負担軽減のための適切な措置を講じる。
- 商務長官は、農務長官と協議の上、米国の海産物や養殖品の生産、販売、輸出を促進し、米国内での加工能力を強化する「米国第一の海産物戦略」を策定し実施する。
- 大統領令の発令日から60日以内に、商務長官と通商代表部(USTR)代表は、省庁間海産物貿易タスクフォースのメンバーと協議の上、海産物の競争力に関する課題を評価し、包括的な海産物貿易戦略を共同で策定する。
- USTRは、主要な海産物生産国の貿易慣行(IUU漁業や海産物サプライチェーンにおける強制労働の利用を含む)を調査し、貿易相手国との交渉や通商法301条の行使など、適切な対応を検討する。
- 商務長官は、保健福祉長官、国土安全保障長官らと協議の上、海産物輸入監視制度拡大の見直し、または廃止を検討し、漁業規制を繰り返し違反する国からの輸入品が対象となるよう、制度の有効性をさらに向上させる措置を講じる。
大統領令で例示されている通商法301条は、外国の通商措置や政策、慣行が通商協定に規定した米国の権利を侵害する場合や、不合理または差別的で米国の商業に負担や制限を与える場合に、USTRに追加関税などの輸入制限措置を発動する権限を認めている。ただし、輸入制限措置発動前の調査や、相手国への協議の要請などをUSTRに義務付けている。現在、中国原産品に課されている7.5~100%の追加関税はこの通商法301条に基づくが(2024年12月12日記事参照、注2)、トランプ政権2期目では301条についての具体的な指示は今回が初めてとなる。なお、バイデン前政権下で指示され、トランプ政権になって継続されている301条調査には、ニカラグアの労働権・人権・法の支配に対する調査(2024年12月11日記事参照)、中国のレガシー半導体に対する調査(2024年12月24日記事参照)、中国の海事・物流・造船分野に対する調査がある。このうち、海事・物流・造船分野に対しては、4月17日に調査結果に基づく対抗措置が発表された(2025年4月22日記事参照)。
(注1)IUU漁業はしばしば、強制労働や人権侵害を伴っていることから、バイデン前政権下でも、IUU漁業と強制労働に対処するための覚書が発表されていた(2022年6月29日記事参照)。
(注2)中国原産品を米国に輸入する際の関税率は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく合成麻薬フェンタニルの流入防止を目的とした追加関税率20%および相互関税率125%に加え、301条に基づく追加関税率などが合計される。
(赤平大寿)
(米国)
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