フランス語使用を義務付けるケベック州法やデジタルサービス税が対象に、米USTR2025年外国貿易障壁報告書(カナダ編)
(米国、カナダ)
調査部米州課
2025年04月07日
米国通商代表部(USTR)は3月31日に発表した「2025年度版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2025年4月2日記事参照)で、カナダに関しては、(1)貿易協定、(2)輸入政策、(3)貿易の技術的(TBT)障壁・衛生植物検疫(SPS)障壁、(4)知的財産保護、(5)サービス分野の障壁、(6)電子商取引(EC)・デジタル貿易の障壁の6項目を取り上げた。2024年版と比較して(2024年4月5日記事参照)、1ページ増加した。
輸入政策では、税関の障壁・貿易の円滑化とエネルギーに関して、新たに記載した。税関の障壁・貿易の円滑化については、カナダ国境サービス庁(CBSA)が2024年10月に開始した、カナダへの輸入品の関税などを徴収する同庁の審査・歳入管理システム(CARM)に触れている。CARMでは、CARM顧客ポータルへの登録とCBSAへの支払い証明を輸入業者が行う必要がある。報告書では、輸入業者がCARM顧客ポータルへのアクセスするのに困難な状況が多発する一方、関税などの支払いについて代替方法を提示していないことを指摘し、引き続き状況を監視するとした。
エネルギーについて、カナダ・アルバータ州の電力市場で、同州産の電力に比べて、米国モンタナ州産の同等価格の電力が差別的に扱われているとした。
TBT障壁については、カナダのプラスチック廃棄物ゼロに向けた計画やケベック州法96号についての記載を追加した。前者(2022年6月28日記事参照)について、カナダがプラスチックによる公害の防止や資源の循環性の向上のために推進する食品包装削減や堆肥化の要件設定が食品の安全性の低下や食品ロスの増加、米国の農産物の輸出の制限につながるとした。
カナダ・ケベック州でフランス語使用を義務づけるケベック州法96号については、2025年6月に発効する製品の包装やラベルに記載されるフランス語以外の商標の一部をフランス語に翻訳するよう求める関連規定への懸念を示した。
デジタル貿易の障壁では、2022年から引き続き、オンライン市場などで得た総収益の3%を徴収するデジタルサービス税(DST)を取り上げた。報告書では、2024年6月に制定されたDSTがカナダ国内の企業を除外していることから、米国企業を標的にしていると指摘した。USTRはカナダに対して、2024年8月30日に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく紛争解決協議を要請している(2024年9月2日記事参照)。米国はOECDの国際課税ルールからの離脱を指示する大統領覚書(2025年1月24日記事参照)や、外国のDSTの調査を指示する大統領覚書を相次いで発表している。カナダのDSTについては、USMCAに基づくパネルの設置を求めるか、1974年通商法302条(b)項に基づいて調査を開始するか、決定するとしている(2025年2月26日記事参照)。
また、2023年6月に可決されたオンラインニュース法(2023年12月6日記事参照)に関して新たに記載があり、米国は引き続きこの問題を監視するとした。
(小谷田浩希)
(米国、カナダ)
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