グーグルがオンラインニュース法でカナダ政府と合意、ニュース事業者に年間1億Cドルの財政支援

(カナダ)

調査部米州課

2023年12月06日

カナダのパスカル・セントーオング民族遺産相は11月29日、オンラインニュース法に基づき、米国のグーグルがカナダのニュース事業者に年間1億カナダ・ドル(約109億円、Cドル、1Cドル=約109円)の財政支援を行うことに合意したとの声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

発表によれば、グーグルは、独立系ニュース事業者や、先住民族や公用語を持つ少数民族のコミュニティーからのニュース事業者など、カナダ全土の幅広いニュース事業者に対して、毎年1億Cドルの財政支援を行う(額はインフレ率に連動)。これに加え、カナダのニュース事業者のために、トレーニング、事業開発のためのツールやリソース、非営利のジャーナリズムプロジェクトへの支援などの提供を表明している。

オンラインニュース法は、支配的なプラットフォームがニュースコンテンツを自社のサービスで利用する場合に、ニュース事業者への対価の支払いを義務付けるものだ。グーグルやメタといった支配的なオンラインプラットフォームがニュースコンテンツの利用によって巨額の広告収入を得る一方で、これらプラットフォームを利用しないニュース事業者が広告収入の減少によって深刻な影響を受けたことを踏まえ、2023年6月に制定された。施行が2023年12月19日に迫る中、同法の対象となる米国メタ・プラットフォームズ(旧:フェイスブック)は同法への反発を表明し、2023年8月からカナダのフェイスブックやインスタグラムでニュースの配信を停止するなど、対象企業の動向が注目されていた。カナダ民族遺産省は今後、施行前に最終規則の詳細を発表する予定だ。

また、セントーオング大臣は11月30日の下院委員会で、グーグルやメタなどの海外のデジタルプラットフォームから国内メディアでの広告掲載にシフトすることを奨励するための税制改革を真剣に検討していると述べた。改革の焦点になっているのは所得税法第19条で、同条については、企業による国外ウェブサイトでの広告費は全額控除できる一方で、カナダのウェブサイトでの広告費は控除に制限があるとして、2018年の上院委員会報告書でも改正が提言されていた。ピーター・ジュリアン下院議員(新民主党)は、同税制を巨大テック企業に対する間接的な補助金だと指摘している(「グローブ・アンド・メール」紙電子版11月30日)。

(谷本皓哉)

(カナダ)

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