3月のカナダ消費者物価指数、前年同月比2.3%上昇

(カナダ)

トロント発

2025年04月17日

カナダ統計局が4月15日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前年同月比2.3%増で、2月の上昇率(2.6%、2025年3月19日記事参照)を0.3ポイント下回った(添付資料表参照)。

統計局は減速の主な要因として、旅行ツアー(前年同月比4.7%減)と航空輸送(同12%減)を挙げ、カナダから米国への航空旅行が減少した影響と分析した。また、ガソリン価格(同1.6%減)の下落は、関税の脅威による世界的な経済成長の鈍化と石油需要の減速懸念によるものと説明している。ガソリン価格を除いたCPIは同2.5%上昇となった。

一方で、3月の食料品(同3.2%増)やアルコール飲料など(同2.4%増)は、これまでの下落から反転し急上昇した。2024年12月中旬から3カ月間施行された「全カナダ人のための減税法(Tax Break for All Canadians Act外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2024年12月19日記事参照)」により価格上昇が目立たなかったが、3月は2024年11月以来、対象製品に対して売上税が再適用された月となり、価格上昇圧力が生じたと分析している。

発表を受けて、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)傘下のRBCエコノミクスのエコノミスト、アビー・シュウ氏は4月15日、今後の見通しとして、米国による関税を回避するための輸入元変更や消費者炭素税(注)の終了により(2025年3月18日記事参照)、物価は限定的ながらも上昇すると予想し、米国の相互関税策などがカナダに波及する可能性についても、懸念が高まっていると指摘した。同氏は、カナダ中央銀行はさらに25ベーシスポイント(1bp=0.01%)の利下げを実施し、6月には2.25%に達すると予測している。スコシアバンク・エコノミクスの副社長兼キャピタル・マーケッツ・エコノミクス責任者のデレク・ホルト氏は、関税などによるインフレ懸念や不確実性などから、中銀は次回の発表では金利を据え置く可能性があると予想した。実際に、4月16日に行われた中銀の発表では、金利は2.75%に据え置かれた(2025年4月17日記事参照)。

(注)連邦温暖化ガス汚染価格制度(GGPPA、Greenhouse Gas Pollution Pricing Act)は、連邦OBPS制度(Output-Based Pricing System)と連邦炭素税制度(Fuel Charge)で構成される。連邦炭素税制度(Fuel Charge)はエンドユーザーを対象に、温室効果ガス(GHG)排出に直接かかわる化石燃料(ガソリンや軽油)に課す税で、全ての条件を満たした納税者に対し、個人向けカナダ炭素税還付(CCR)が適用される(2023年9月27日付地域・分析レポート参照)。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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