米USTR、メキシコの通関制度など問題視、2025年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2025年04月03日
米国通商代表部(USTR)は3月31日に公表した2025年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2025年4月2日記事参照)で、メキシコの貿易障壁について7ページを充て、貿易協定、メキシコの輸入政策、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)措置、知的財産保護、サービス分野の障壁、投資障壁という分野別に報告した。
北米3カ国の自由貿易協定の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)については、前身の北米自由貿易協定(NAFTA)時代から続く関税免除を維持し、労働や環境に関する条項を盛り込むなど、例年どおり簡潔に記載するにとどまった。USMCAの原産地規則を満たすことで関税免除の特恵待遇が保障されることから(注)、関税障壁は指摘しなかった。一方、非関税障壁としてメキシコの通関制度を挙げ、要件や規則の変更に関する通知から施行までの期間が短いことや、各税関によって要件や規則の解釈に差異があることなどを問題視した。また、メキシコ政府が2024年10月に発表し、2025年1月までに施行した、2,500ドル未満の貨物に対する簡易通関制度の利用に際して荷受人などの情報の詳細な報告を義務付ける規則は、米国の事業者の簡易通関制度の利用を妨げると問題視した。
また、メキシコ政府が2023年2月に発表し、直近2カ年のNTEメキシコ編(2023年4月5日記事、2024年4月3日記事参照)で問題視してきた、食品や飼料への遺伝子組み換えトウモロコシの使用を制限する規制については、メキシコ政府がUSMCAの紛争解決パネルの裁定に従って、2025年2月に規制を撤回したとの経緯を報告した(2025年2月7日記事参照)。併せて「USMCAに基づく市場アクセスの提供に関する合意内容のメキシコ側の順守状況を引き続き注視する」とした。
また、メキシコの知的財産保護に関する法規制の欠如や、模倣品・海賊版製品に対する取り締まりの不充分さを指摘したほか、国営石油公社(PEMEX)中心のエネルギー政策に伴うエネルギー分野の参入障壁などを報告した。
(注)米国は3月4日にメキシコとカナダの産品に対して、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく25%の追加関税の賦課を開始した(2025年3月4日記事参照)。一方で、USMCA原産地規則を満たすメキシコとカナダの産品については、3月7日以降、IEEPA追加関税を免除する除外措置が講じられている(2025年3月7日記事参照)。同除外措置の適用期限について、官報では明示的に設定していない。一方、ドナルド・トランプ大統領はSNS投稿を通じ、4月2日までとの考えを示していた。ただし、ジェトロでは、米国東部時間4月2日正午時点で、2025年NTE記載内容を含めて、同措置の継続または廃止に関する米国政府の発表は確認できていない。
(葛西泰介)
(米国、メキシコ)
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