乳製品の技術的障壁や鉱業の投資障壁を懸念、米USTR2023年外国貿易障壁報告書(メキシコ編)

(米国、メキシコ)

米州課

2023年04月05日

米国通商代表部(USTR)が3月31日に公開した2023年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」(2023年4月5日記事参照)では、メキシコについて、非関税障壁、貿易の技術的障壁(TBT)と植物衛生検疫(SPS)障害、知的財産権の保護、サービス障壁、デジタル貿易障壁、投資障壁が取り上げられた。ただし、前年と比べ政府調達の記載がなくなったほか、非関税障壁では精製燃料とエタノール、TBTではアルコール飲料や健康に関する一般法、非アルコール飲料などの未成年者への販売禁止に関する州の措置、自動車安全基準など、サービス障壁ではAV機器サービス、投資障壁では環境の記載がそれぞれ削除され、前年の11ページから6ページへとおおよそ半減した。

他方、新たに追加されたのは、TBTの乳製品要件と投資障壁の鉱業だ。乳製品要件については、チーズ、粉ミルク、ヨーグルトに関するWTOのTBT委員会に対するメキシコの通知が、米国の乳製品輸出に影響があるとした。具体的には、過度に負担の大きい情報提供要件や重複する技術要件、国際規格使用の欠如などが挙げられている。

投資障壁の鉱業では、メキシコのリチウム資源へのアクセスについて懸念が示された。2022年4月に改正された鉱業法によって、新たに設立された国営企業のLitio para México(通称LitioMx)が、メキシコでのリチウムの探査、開発、利用を、独占的に管理することになるとし、メキシコ政府が現在検討している当該法の履行を今後監視していくと記載された。

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に関する記載も随所にみられた。冒頭でのUSMCAの説明では、労働と環境について、「強力で強制力のある義務」とする表現が前年から引き続き記載された。バイデン政権は、労働者中心の通商政策を掲げているとおり、労働者の権利保護を目的に、USMCAで定められた「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」を積極的に活用している。RRMは、特定の事業所単位で労働者の結社の自由と団体交渉権に関する権利侵害をめぐる紛争を解決するもので、懸念のある事業所で労働基本権の侵害が行われていると断定された場合、提訴国政府はUSMCAの優遇措置停止などができる。これまで、RMMに基づく申請は7件ある(2023年4月3日記事参照)。

また、USMCAのSPSに違反するとして、米国がメキシコに対して協議申し入れをしている、遺伝子組み換えトウモロコシなどの実質的な販売制限についても記載された(2023年3月8日記事参照)。報告書では、メキシコのバイオ安全法の下では、特定のバイオ技術を利用した製品の輸入や販売の審査が科学的根拠に基づかないこと、申請処理の遅れがあることに深刻な懸念があると述べられている。

(赤平大寿)

(米国、メキシコ)

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