トランプ米大統領、米国第一の通商政策発表、安全保障脅かす輸入の調査など指示
(米国、中国、ロシア、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2025年01月22日
米国のドナルド・トランプ大統領は就任初日の1月20日、米国第一の通商政策と題する大統領覚書を発表した。そのうち「経済安全保障に関する追加事項」では、安全保障を脅かす輸入拡大に対する調査や、輸出管理の強化、対外投資規制の見直しなどを指示した(添付資料表参照)。
「経済安全保障に関する追加事項」では、商務長官に対して、米国の産業や製造基盤について、経済や安全保障の側面から全面的な見直しを行い、1962年通商拡大法232条に基づく調査を開始する必要があるかを評価するよう指示した。232条は、ある製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると商務省が判断した場合に、当該輸入を是正する措置を取る権限を大統領に与えている。現在は232条に基づいて、鉄鋼とアルミニウム製品に対して10~25%の追加関税が賦課されている(2024年5月21日記事参照)。トランプ大統領はこの鉄鋼とアルミ製品に対する追加関税についても、国家安全保障に対する脅威への対応における有効性を検証・評価するよう、大統領補佐官(経済政策担当)や商務長官に指示した。
輸出管理については、米国の技術的優位性の維持・獲得・強化、既存の輸出規制の「抜け穴」を特定して排除する方法を評価し、勧告するよう商務長官らに指示した。バイデン前政権下では、輸出管理の強化が経済安全保障政策の中心に据えられ、先端半導体やバイオテクノロジーなど、政権交代間際まで輸出管理強化が発表されていた(2025年1月17日記事参照)。
バイデン政権下の1月14日に発表され、中国とロシアが関係するコネクテッドカーなどの輸入または販売を禁止する最終規則についても見直し(2025年1月15日記事参照)、規制対象となるインターネット接続製品の追加などを検討するよう商務長官に指示した。
財務長官に対しては、2023年8月に発表された米国から懸念国への対外投資に関する大統領令(2023年8月14日記事参照)、同大統領令を履行するための最終規則(2024年10月30日記事参照)の見直しを指示した。同大統領令では、米国人(U.S. person)が半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、人工知能(AI)の3分野で、懸念国の個人・事業体・政府と取引する場合に、財務省への届け出を義務付け、国家安全保障に特に深刻な脅威をもたらす場合には、取引を禁止するプログラムを創設すると定めた。懸念国には現時点で、中国(香港とマカオを含む)のみが指定されている。
そのほか、カナダ、メキシコ、中国からの不法移民と合成麻薬フェンタニルの流入を評価し、それを解決するための適切な通商、国家安全保障上の措置を勧告するよう、商務長官らに指示した。トランプ大統領は2024年11月に、フェンタニルや不法移民の流入を理由に、メキシコとカナダからの輸入に25%の追加関税を課し、中国からの輸入に対しては、現行の追加関税率に10%上乗せすると発表していた(2024年11月26日記事参照)。
大統領覚書が定めた「不公正かつ不均衡な貿易への対処」については2025年1月22日記事、「中国との経済および通商関係」については2025年1月22日記事を参照。
(赤平大寿)
(米国、中国、ロシア、メキシコ、カナダ)
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