米税関、マレーシア企業の使い捨て用手袋の輸入差し止めを撤回、人権状況是正受け
(米国、マレーシア)
ニューヨーク発
2024年10月16日
米国税関・国境警備局(CBP)は10月11日、マレーシア企業のブライトウェイが製造した使い捨て用手袋の米国輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)を撤回したと発表した。同日以降、同社の使い捨て用手袋の米国輸入が再び認められるようになった。
CBPは、強制労働・児童労働・囚人労働などを利用して生産された物品の輸入を禁じる1930年関税法第307条に基づいて、輸入される物品に強制労働などの関与が推定される場合、WROを発令して当該物品の輸入を差し止める権限を有する。CBPは2021年12月に、ブライトウェイにおいてILOの強制労働の指標に当てはまる状況があったとして、同社の使い捨て手袋に対してWROを発令した(2021年12月21日記事参照)。
今回のCBPの発表によると、同社はWRO発令以降に、強制労働の指標に当てはまる状況の是正に向けた措置を講じた。CBPのアンマリー・ハイスミス局長補は声明で、「企業はCBPの強力で一貫した取り締まりの姿勢を目にして行動を変えつつある」「多くの企業が、CBPが提供する多くのリソースを活用して、サプライチェーンのデューディリジェンスを積極的に実施している」と述べた。
今回のWROの撤回により、発令中の有効なWROは50件となった(注1)。CBPは2021年以降、マレーシア企業の使い捨て用手袋に対して4件のWROを発表していたが、今回の発表をもってその全てが撤回されたことになる(注2)。ただし、マレーシア企業のFGVのパーム油に対するWROは引き続き有効となっている。
人権に関連する米国の輸入規制では、WROのほかにも、中国の新疆ウイグル自治区などが関与する物品の輸入を原則禁止するウイグル強制労働防止法(UFLPA)が2022年6月から施行されている。CBPの公表するUFLPAに基づく輸入差し止め措置の執行データによると、2024年9月1日までに35億6,000万ドル相当の貨物が差し止められている。うち、マレーシアからの貨物が15億5,000万ドル相当と全体の4割強を占める(注3)。
(注1)国・地域別には中国が36件で最多を占める。直近では、CBPは2024年4月に、中国企業が製造する作業用手袋に対して、製造工程での人権侵害の疑いに基づいて新規のWROを発令した(2024年4月15日記事参照)。
(注2)ほか3件は、2023年2月10日記事、2023年4月28日記事、2023年9月22日記事参照。2023年9月にWROが撤回されたスーパーマックス(2024年9月24日記事参照)は、2024年9月に米国での製造開始を発表している。
(注3)UFLPAの概要や動向はジェトロの特集「ウイグル強制労働防止法」参照。UFLPAに基づく措置の産業分野別・国別の件数・金額は2024年10月3日記事添付資料参照。
(葛西泰介)
(米国、マレーシア)
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