バイデン米政権、輸送部門のインフラ投資に係る定量的な成果発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年05月14日

米国のバイデン政権は5月13日、インフラ整備に関するこれまでの成果をまとめたファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。米国で5月13~17日に実施中の「第12回インフラウイーク」に合わせたもの。バイデン政権はインフラ投資雇用法(IIJA)などの制定を通じ、道路や橋の再建、清潔で安全な水の提供、PFAS(注1)をはじめとする環境汚染対策、クリーンエネルギー関連の投資などに取り組んでおり、今回のファクトシートはこうした取り組みの進捗を定量的に示すものとなっている。また、IIJAを含む各種プロジェクトの実施場所や投資額などをまとめた地図外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも併せて公表しており、バイデン政権による取り組みの恩恵が全米に広がっていることをアピールしている。今回のファクトシートで言及したもののうち、運輸部門に関するIIJAによる投資額と主な内容は次のとおり。

(1)道路・橋

3,000億ドル以上が投資される見込みで、アイゼンハワー政権(1953~1961年)以来の大規模投資であることを強調。これまでに、1万3,000件以上の橋の修復プロジェクト、25万7,000マイル(約41万3,601キロ)を超える道路の改善プロジェクトが行われている。

(2)鉄道

660億ドルが投資される見込みで、米旅客鉄道公社アムトラックの発足以来、鉄道への最大の投資であることを強調。これまでに、北東部の25プロジェクトに164億ドル、ラスベガスとロサンゼルス近郊を結ぶブライトン・ウエスト高速鉄道プロジェクトをはじめとする(2023年12月12日記事参照)、全米で10の主要旅客鉄道プロジェクトに82億ドルの投資が行われている。

(3)空港

250億ドルが投資される見込み。これまでに300以上の空港ターミナルの改善プロジェクトや、1,000以上の空港舗装プロジェクトなどを対象に、150億ドル近くの投資が行われている。

(4)港湾・水路

170億ドルが投資される見込み。これまでにルイジアナ州ニューオーリンズ港のコンテナターミナル建設やバージニア州バージニア港のしゅんせつ(注2)プロジェクトをはじめ、450以上の港湾、水路プロジェクトへの投資が行われている。

(5)公共交通機関

公共交通機関に対して900億ドル近くが投資される見込みで、米国史上最大の投資であることを強調。これまでに3,000台の低・ゼロエミッションの路線バス、5,000台のクリーンなスクールバス(2024年1月12日記事参照)、都市旅客鉄道(ライト・レール・トランジット、LRT)などに投資している。

(6)電気自動車(EV)用の充電ステーション、バッテリー製造・重要鉱物

EV用の充電ステーションに75億ドル、バッテリー製造・重要鉱物に70億ドル以上が投資される見込み。これまでにバッテリー製造・重要鉱物向けに35億ドルの投資が発表され(2023年11月20日記事参照)、5つのバッテリー製造工場が稼働している。

(注1)PFASは、いわゆる有機フッ素化合物の総称で、耐熱性や耐水性、耐油性、非粘着性などの特性があり、衣料、食品包装、調理器具、化粧品、電子・電気部品、自動車部品をはじめとする多くの産業や製品に利用されている。一方で、PFASが環境や人体に与えるマイナスの影響を理由に、PFASに関する規制の導入やメーカーが製造の中止を表明するといった動きもある(2022年12月22日記事2023年3月15日記事参照)。

(注2)河川や運河、港湾などで水底の土砂を取り除くこと。

(加藤翔一)

(米国)

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