第1四半期のGDP、製造業の不調が継続

(メキシコ)

メキシコ発

2024年05月27日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)は5月23日、2024年第1四半期(1~3月)の産業分野別実質GDP成長率PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注1)を発表した。GDP全体では前年同期比1.6%、季節調整済み前期比は0.28%となった。前年同期比成長率を産業別にみると(添付資料表1参照)、農牧・林業・水産は0.60%、鉱工業は0.86%、サービス業は2.06%と全てプラス、季節調整済み前期比(添付資料表2参照)では、農牧・林業・水産は1.70%増、鉱工業は0.48%減、サービス業は0.64%増と、鉱工業のみマイナスだった。

鉱工業のうち、製造業は前年同期比1.0%減、前期比0.28%減と、2四半期連続の減少となった。製造業のうち輸送機器製造業も前年同期比1.9%減と、ついにマイナスに転じた。この要因としては、1ドル16ペソ台を推移して長引く通貨ペソ高が輸出を行う製造業へ与える影響が想定される。また、政府が優先事業としている公共事業(注2)の影響により、建設業が前年同期比10.7%増だったが、前期比では0.67%減と、2022年第3四半期(7~9月)以来のマイナスとなった。

サービス業の内訳を見ると、卸売業が前年同期比4.0%増だったが、前期比では0.09%の減だった。小売業は前年同期比1.6%増、前期比でも2.16%増だった。ホテル・レストラン業は前年同期比では0.5%減、前期比では2.09%減だった。労働法改正による人材派遣の原則禁止(2021年4月27日記事2021年8月2日記事参照)により、2021年第3四半期以降不振が続くビジネス支援サービスは前年同期比2.6%減、前期比6.35%減となり、再びマイナスに転じた。

専門家はメキシコ経済のさらなる下方修正リスクに言及

5月2日付でメキシコ中央銀行が発表した国内外41の民間シンクタンクを対象としたアンケートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2024年第1四半期の実質GDP成長率は2.3%と予想されていたが、同予想を下回る成長となった。バンコ・バセのガブリエラ・シラー経済アナリストは「メキシコの成長には重大な下方修正のリスクがあり、停電、水不足、2024年下半期の公共支出の減少、インフレ、高金利、地政学的紛争による供給ショックの可能性、消費減退懸念、米国の景気減退などが挙げられる」と、メキシコ経済の懸念材料を述べた(「エル・パイス」紙5月23日)。

(注1)INEGIは、2023年第2四半期(4~6月)から国民経済計算の基準年を2013年から2018年に変更したため、数値が過去にさかのぼって修正されており、2023年第1四半期(1~3月)以前の実質GDP成長率(2023年5月29日記事参照)の数値とは継続性がない。

(注2)アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)政権下で進められてきた4大プロジェクトのうち、マヤ観光鉄道(2020年5月25日記事参照)やテワンテペック地峡開発(2023年7月4日記事参照)への公共投資が拡大している。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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