エネルギー移行の効率的実現に向けグリーン投資戦略とCCUS関連法策定へ
(マレーシア)
クアラルンプール発
2024年02月16日
マレーシア投資貿易産業省(MITI)は2月14日、グリーン投資戦略実施運営委員会の初回会合を開催し、グリーン投資戦略を策定するとともに、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)にかかる法案を検討することを明らかにした(MITIプレスリリース、マレー語のみ)。委員会は、エネルギー移行に要する資金の調達を支援する省庁横断枠組みで、ファディラ・ユソフ副首相兼エネルギー移行・水資源変革相を委員長とし、MITIに事務局を置く。経済省、財務省、エネルギー移行・水資源変革省(注)、天然資源・持続可能性省、科学技術・イノベーション省も参加する。
マレーシアは、エネルギー移行ロードマップ(NETR)(2023年9月4日記事参照)と新産業マスタープラン(NIMP)2030(2023年9月7日記事参照)を通じて、2050年までに脱炭素化を達成することを目指している。しかし、エネルギー移行に際し、2050年までに総額1兆2,000億~1兆3,000憶リンギ(約38兆~41兆円、1リンギ=約31円)、2023年から2029年にかけての初期段階でも2,500億~2,800億リンギの資金が必要だと政府は推計している。この巨額の資金需要に対応するため、環境・社会・企業統治(ESG)の側面に重点を置いた、競争力あるグリーン投資を活用する必要があると、MITIは説明した。
委員会は今後、NETRとNIMP2030を補完する短期研究として、(1)NETRが指定する基幹6分野(エネルギー効率、再生可能エネルギー、水素、バイオエネルギー、グリーンモビリティー、CCUS)における今後の投資機会、(2)グリーン投資の優先順位、(3)グリーン投資と基幹分野との相乗効果、(4)グリーン投資の現地化、(5)既存分野の戦略策定によるグリーン投資振興、を分析して明らかにする。テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、この短期研究は、より効果的な方法でグリーン投資事業を実施するための出発点だと強調した。
委員会ではこれに加え、NETRの基幹分野の1つであるCCUSの効率的な実現を図るため、CCUSにかかる統一的な法的枠組みを検討することでも合意した。事業のガバナンス手法なども含め、全ての関係者がより所とする包括的な法律の策定を目指したい考えだ。なお、ザフルル氏は先に、インド太平洋枠組み(IPEF)においても、エネルギー転換を促進するための資金調達の重要性を指摘しており、重要技術としてCCUSに言及していた(2023年11月24日記事参照)。
(注)2024年2月8日付で、旧エネルギー移行・公益事業省から名称を変更(同省プレスリリース、マレー語のみ)。同省は、2023年12月の内閣改造において、前身の天然資源・環境・気候変動省から分割されたばかりだった(2023年12月14日記事参照)。
(吾郷伊都子)
(マレーシア)
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