アンワル政権2年目に向け内閣改造、閣僚増員で体制強化へ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年12月14日

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は12月12日、内閣改造人事を発表した(首相府がメディアに送付した書簡より)。これにより、閣僚ポストは大臣31人と副大臣29人の計60人へ、約1年前の組閣時(2022年12月5日記事参照)の55人から増員された(添付資料表参照)。新閣僚は、同日午後に王宮で宣誓を行った。

アンワル首相は12月1日、2023年内に内閣改造を行う可能性を示唆した。2023年7月に死去したサラフディン・アユブ国内取引・生活費相のポストが空席だったほか、天然資源・環境・気候変動省の再編、人的資源相や保健相交代の可能性などが報じられていた。

アンワル首相は人事の発表にあたり、「経済成長や生活コスト上昇の問題に確実に効果的に取り組むため」「新たな分野、特に人工知能やデジタルトランスフォーメーションへの探求は重要」と理由を述べ、「内閣が効果的に職務を遂行し、新たな問題が生じない限りは、次の総選挙までの4年間で布陣を変えることない」と見通した。

財務相2人体制へ、注力するデジタルやエネルギー移行機能を分割

アンワル首相は、第2財務相ポストを新設し、財務相として自身が持つ権限の一部を委譲する。第2財務相には、従業員積立基金(EPF)のアミル・ハムザ・アジザン最高経営責任者(CEO)が任命された。同氏は、国営電力会社テナガ・ナショナル(TNB)や国有石油会社ペトロナスの小売部門ペトロナス・ダガンガン(PDB)のCEOを歴任するなど実務経験も豊富で、アンワル首相は「経済政策の効果を正しく図るため、財務省は専門家チームが率いる必要がある」と、同氏の手腕に対する期待と要望を強調した。

政権が力を入れるデジタルやエネルギー移行に関しては、既存省庁を分割し、機能を拡充する。デジタル通信省は「通信省」と「デジタル省」、天然資源・環境・気候変動省は「天然資源・持続可能性省」と「エネルギー移行・公益事業省」に分割し、それぞれ前者は内閣改造前の大臣が留任する。新設のデジタル省のトップには、ゴビンド・シン・デオ元通信マルチメディア相が就任し、エネルギー移行・公益事業相はファディラ・ユソフ副首相が兼任する。環境関連の省庁の再編には、エネルギー移行ロードマップ(NETR)(2023年9月4日記事参照)にも示されているように、再生可能エネルギーへの転換を重視する政府の姿勢が表れていると見られる。

内閣改造では、ズルキフリ・アフマド保健相や上記ゴビンド・デジタル相など、閣僚経験者の再登板もあった。改造前に大臣ポストに就いていた閣僚のうち、シバクマル・バラタラジュ・ナイドゥ前人的資源相のみ、汚職の嫌疑が影響したと見られ選外となった。

閣僚の人数は増えたものの、2020年3月発足のムヒディン内閣(大臣32人、副大臣38人)や2021年8月発足のイスマイル・サブリ政権(大臣31人、副大臣38人)など過去の政権と比べると依然として小型の内閣といえる。

(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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