マレーシア、IPEFサプライチェーン協定署名を歓迎、クリーン経済推進にも意欲

(マレーシア、日本)

クアラルンプール発

2023年11月24日

米国サンフランシスコで11月13~14日に開催された、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の閣僚会合に参加したマレーシアのテンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、スピード感を持ってサプライチェーン協定の署名に至ったことを歓迎するとともに、クリーン経済の推進についても期待を示した。APEC首脳会議のため11月13日に現地入りしていたアンワル・イブラヒム首相も「マレーシアのIPEFへの参加は、地域の経済統合と協力への取り組みを示すもの」と述べた(11月19日付ベルナマ通信)。

11月16日に更新した自身のSNSで、ザフルル氏は「IPEF閣僚会議は、第2の柱(サプライチェーン)につき、加盟国のサプライチェーン上の安全を保障するための協定に署名した。第3の柱(クリーン経済)と第4の柱(公正な経済)も実施的に妥結した」と報告した(4本柱については、2023年11月17日記事参照)。

これに先立ちザフルル氏は11月14日、IPEFの具体的な利益について強力なメッセージを発信することが重要だと述べた。特にサプライチェーン協定の署名を受け、「加盟していない国に対しても、IPEFの下では共同で枠組みを達成できることが示せた」「サプライチェーンという初めての分野で、それも記録的な速さで協定に署名した」と成果を強調した(11月15日付ベルナマ通信)。第3と第4の柱の実質的妥結にも触れ、「成果は祝福するに値するが、今はもう合意事項の実施に進む段階に来ている」とし、マレーシアとしても、サプライチェーン協定に関する機関(注)や4本柱に基づく委員会といった運営準備に着手する用意があると述べた。

気候変動関連インフラの重要性を指摘

ザフルル氏によれば、マレーシアはエネルギー転換を促進するための資金調達、気候変動技術の導入、気候変動に強いインフラへの投資の重要性を常に強調してきた。この点、初回は2024年上期とされる「IPEFクリーン経済投資家フォーラム」の年次開催提案をマレーシアとして歓迎するとした。IPEF触媒資本基金の設立も好意的に捉えている。ザフルル氏は、気候関連インフラは必ずしも利益を生むとは限らないが、特に途上国には極めて重要との認識を示し、「マレーシアとしては、多国間金融も含め、気候インフラ事業を実施するための適切な資金調達メカニズムの検討を提案したい」と表明した。

この点でザフルル氏は、二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)を含む革新的なクリーン技術に対する取り組みが、IPEF地域の温室効果ガス(GHG)排出量削減において重要な役割を果たすとの見解を示した。同氏は、CCUSが、第3の柱においてGHG削減のための潜在的技術として特定されながらも、国境を越えた貯留に関しては取り組みが限られていることを受け、「マレーシアは、国境を越えた二酸化炭素の貯留を可能とする、国際的なガバナンス枠組みの確立を奨励したい」と意欲を見せた。

(注)具体的には、IPEFサプライチェーン協定に関する協議会、危機対応ネットワーク、労働権諮問委員会を指す(外務省ウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、日本)

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