政権、議会、産業界で深まる対中政策に関する論調の違い、ジェトロの米中月例レポート(2023年12月)

(米国、中国)

調査部米州課

2024年01月29日

ジェトロは1月22日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年12月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

12月はバイデン政権と米国連邦議会、米国産業界で異なる意見があらわとなった月だった。

バイデン政権の動きとして、財務省のジャネット・イエレン長官が首都ワシントンで行われた、中国で事業を行う米国企業で構成する米中ビジネス評議会(USCBC)の設立50周年記念イベントで、米中経済関係に関する講演を行った(2023年12月18日記事参照)。講演では、バイデン政権の姿勢を踏襲し、米中デカップリングは世界の利益にならないことをあらためて強調。コミュニケーションを続けるため、2023年7月以来となる訪中計画があると明らかにした。

関係改善を図ろうとする政権に対し、米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」は、中国との経済関係に関する政策提言をまとめた報告書で、米国のこれまでの対中関与政策は失敗したと指摘し、「米国の国家安全保障、経済安全保障、価値観を米中関係の中核に据える新たな道を切り開かなければならない」と訴えた(2023年12月15日記事参照)。さらに、具体的な戦略の1つとして、中国との経済関係のリセットを行うべきとしている。これに対し、米国商工会議所は多くの勧告を歓迎するとしつつも、中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)を実質的に廃止すべきとの提言は支持しないとしている。

また、米国通商代表部(USTR)は1974年通商法301条に基づいて中国原産の輸入品に課している追加関税について、適用除外対象となっている429品目の除外期限を2024年5月31日まで延長すると発表した(2023年12月27日記事参照)。USTRは2022年9月に、追加関税から恩恵を受ける国内産業界から継続要請を受理したため、措置を継続し、4年目の見直しに着手すると発表していたが(2022年9月5日記事参照)、1年以上経過した現在も見直しは完了していない。現状の不透明性や、USTRがこれまで適用除外措置の延長発表を期限切れの直前に行ってきたことに対し、産業界からは批判の声が出ている。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(谷本皓哉)

(米国、中国)

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