米USTR、301条対中追加関税の適用除外を2024年5月末まで延長、産業界は先行き不透明感に懸念

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年12月27日

米国通商代表部(USTR)は12月26日、1974年通商法301条に基づき中国原産の輸入品に課している追加関税について、適用除外対象となっている429品目の除外期限を、2023年12月31日から2024年5月31日まで延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

USTRは、トランプ前政権時の2018年7月以降、中国からの3,500億ドル超相当の輸入に対し最大25%の追加関税を課す一方、適用除外措置を設けていた。適用除外は累計2,200品目超に与えられたが、大半が2020年12月末で期限切れを迎えた。今回、除外期限が延長された429品目のうち77品目は新型コロナウイルス対策を理由としたもので、残りの352品目はパブリックコメントの結果で延長が認められたもの。いずれも、2023年12月末が延長期限とされていた(2023年9月7日記事参照)。

USTRはまた、現在認められている適用除外措置をさらに延長すべきかについて、パブリックコメントを募集すると発表した。2024年1月22日から提出可能で(注)、締め切りは同年2月21日となっている。正式には、2023年内に官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で公示される予定だ。

USTRは今回の決定について、法令が定める要件や目的などに合致し、秩序だった適用除外制度の見直しが可能になるほか、通商法301条が定める4年目の法定見直しとも整合的だとしている。通商法301条では、同法に基づく措置(今回の場合は追加関税)は、発動から4年間が満了する最後の60日間に、当該措置による恩恵を受ける国内産業界から継続要望がなければ終了すると定められている。要望が提出され継続する場合、USTRは、当該措置による目的達成のための効果、消費者を含む米国経済への影響などについて検証し、見直さなければならない。USTRは2022年9月に、追加関税から恩恵を受ける国内産業界から継続要請を受理したため措置を継続し、4年目の見直しに着手すると発表していた(2022年9月5日記事参照)。しかし、1年以上経過した現在も見直しは完了していない。加えて、適用除外措置の継続のみならず、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙電子版(2023年12月21日)など、主要メディアによれば、電気自動車(EV)などの追加関税率の引き上げが検討されているという。

こうした不透明な状況に対して、産業界からは批判の声があがっている。169の業界団体による連合「自由貿易のための米国民(Americans for Free Trade)」は、議会で通商を所管する上院財政委員会と下院歳入委員会の委員長らに宛てた12月20日付の書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、議会がUSTRに対して「301条関税に関する4年間の法定見直しの結果を直ちにまとめ公表するよう要請する」ことを求めている。

またUSTRはこれまで、適用除外措置の延長発表を、期限が切れる直前に行ってきた。こうした状況に対しても、産業界から批判の声が出ている(政治専門紙「ポリティコ」2023年12月26日)。

(注)パブリックコメントは、1月22日以降、USTRのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから提出する。

(赤平大寿)

(米国、中国)

ビジネス短信 509615cc29b7009f