習近平国家主席のベトナム訪問、2国間関係を深化へ

(ベトナム、中国)

ハノイ発

2024年01月04日

中国の習近平国家主席は、ベトナムのグエン・フー・チョン書記長およびボー・バン・トゥオン国家主席の招待を受け、12月12~13日にベトナムを訪問した(2023年12月20日記事参照)。国家主席としての習氏のベトナム訪問は、前回2017年11月以来の3度目で、チョン氏と習氏の会談は2022年10月以来となる(2022年11月8日記事参照)。

2023年は、両国の包括的戦略的パートナーシップの樹立15周年にあたる。ベトナム外交上最高位の2国間関係である同パートナーシップ関係にあるのは、中国のほか、ロシア、インド、韓国、米国、日本だ。このうち、米国は9月(2023年9月19日記事参照)、日本は11月(2023年12月7日記事参照)に同パートナーシップ関係に格上げされている。今回の習氏の訪越は、中越関係を米越関係より上位に位置付ける狙いがあったとみられる。

習氏の滞在中、両国は2国間の政治・外交、地方省間協力、デジタル経済、グリーン開発、農産物の輸出入、人材育成など36件の覚書に署名。この成果を踏まえて両国が発表した共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、同パートナーシップを深化させ、未来を共有する共同体を構築するとし、(1)政治的信頼の強化、(2)防衛・安全保障の協力強化(3)経済・貿易分野の協力の深化、(4)社会基盤の強化、(5)多国間連携の緊密化、(6)海洋問題における意見相違の適切な解決といった6つの協力の方向性を明確化した。

経済、貿易面では、「両廊一圏」の枠組み(注)と一帯一路構想の開発戦略のコネクティビティー、両国国境をまたぐ鉄道の標準軌化をはじめとする、インフラや物流などにおける協力強化が明記された。農業、インフラ、エネルギー、デジタル経済、グリーン開発分野での投資や協力も推進する。

標準軌鉄道の協力は、以前から協議をしていたが、共同声明では適切な時期に検討をするという表現にとどまり、具体的な合意には至らなかったとみられる。中国の昆明からベトナムの港湾都市ハイフォンを結ぶ予定の標準軌鉄道は、ベトナム北部のレアアース埋蔵地を通過するとされる。ベトナムのレアアース埋蔵量は中国に次ぐ世界2位とされており、中国企業がベトナムのレアアース開発への協力に関心を寄せている。しかし、鉱物分野についても、共同声明ではエネルギー生産とサプライチェーンの安全を確保する可能性を積極的に模索するという内容にとどまり、具体的な協力案件への言及はなかった。

(注)2つの回廊と一帯の経済圏での2国間の経済協力枠組み。2つの回廊は、中国の昆明からベトナムのラオカイを通り、ハノイとハイフォンを経てクアンニンに至るルートと、南寧からランソン、ハノイ経由でクアンニンをたどるルートを指す。一帯の経済圏は、中国南部からハイフォンまでトンキン湾(北部湾)海域にまたがる地域を指す。

(グエン・ラン)

(ベトナム、中国)

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