バイデン米大統領がベトナム訪問、半導体分野など経済面中心に連携強化

(ベトナム、米国)

ハノイ発

2023年09月19日

米国のジョー・バイデン大統領が9月10~11日、ベトナムを訪問した(2023年9月12日記事参照)。米国大統領のベトナム訪問は2019年のドナルド・トランプ大統領(当時)以来で、グエン・フー・チョン共産党書記長の招待で実現した。両国は2国間関係を包括的パートナーシップからベトナム外交上最高位の「包括的戦略パートナーシップ」に格上げし、経済面では貿易促進や半導体分野を筆頭に協力関係を深めていくと発表した。

両国政府が発表した共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、経済・貿易や気候変動対策、ベトナム戦争処理、安全保障分野を含めた多くの事項で協力強化に合意。貿易面では、米国が主導するインド太平洋経済枠組み(IPEF)の下、さらなる推進を図ることを確認した。

半導体分野については、ベトナムの半導体関連産業や人材の育成面で連携を進め、強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築を目指すとした。ホワイトハウスが発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、半導体サプライチェーン強化の具体的案件として、米国アムコーテクノロジーが建設する北部バクニン省の工場の10月の稼働開始、米国シノプシスとサイゴンハイテクパークの共同事業による半導体の設計拠点とインキュベーションセンターの設立、米国マーベルテクノロジーの設計拠点設立を公表した。そのほか、米国エヌビディアが地場の情報通信技術(ICT)大手FPT、通信大手ベトテル、複合企業ビングループと人工知能(AI)を駆使した事業で提携することなども発表した。

9月11日のファム・ミン・チン首相とバイデン大統領との会談では、2国間の貿易・投資をさらに促進させるため、チン首相がベトナムに対する速やかな市場経済国認定を要請した(ベトナム政府電子版9月12日)。仮に同認定によって非市場経済国を対象に課されるアンチダンピング税などが軽減されれば、ベトナムの輸出には追い風となる。ただし、米国の2022年の対ベトナム貿易赤字額は1,100億ドル超で、国別で3位にまで増えており、ベトナムを迂回(うかい)する中国製品の米国輸出も増える可能性があることから、米国は慎重に対応を検討するものとみられる。

ベトナム、中国に配慮しつつ、米国と交渉

ベトナムはどの国とも等しく距離を保つ全方位外交を掲げている。今回のバイデン大統領のベトナム訪問では、双方の利益につながる機会と捉えて関係強化の動きがみられたが、中国への配慮もうかがえた。

バイデン大統領の訪問に先立つ9月5日、中国共産党の党外交トップを担う劉建超中央対外連絡部長がベトナムを訪問し、チョン書記長と面会した。チョン書記長は会談で、中国とベトナム2国間の協力関係の発展は最優先事項と話した。

(萩原遼太朗)

(ベトナム、米国)

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