米商務省、2023年の輸出管理規則に基づく執行実績を発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年01月18日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は1月2日、2023年の輸出管理規則に基づく執行実績を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。発表では冒頭、「歴史上、今ほど輸出管理が集団安全保障の中心だった時代はない」と記し、人工知能(AI)や量子コンピューティングのような先端技術が地政学的情勢を大きく左右するとして、これらの技術が悪意のある者に渡らないようにする輸出管理の執行強化は極めて重要だと強調した。

BISが執行実績でまず挙げたのは、破壊的技術ストライクフォースによる、輸出管理違反などを理由とした5件の刑事訴追(2023年5月18日記事参照)や、エンティティー・リスト(EL)の活用だ。同ストライクフォースは、米国の先端技術をロシアや中国などの国家的敵対者による違法な取得や使用から守ることを目的に、商務省が司法省(DOJ)とともに2023年2月に立ち上げた(2023年2月17日記事参照)。

次に、安全保障上の重大な脅威に対する連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省国土安全捜査局(HSI)、アルコール・たばこ・火器、爆発物取締局(ATF)など、他の法執行機関と連携した取り締まりを挙げた。その具体例には、シーゲイトに対する3億ドルというBIS単独では史上最高の罰金刑を挙げた。同社は外国直接製品(FDP)ルールに違反して、中国の華為技術(ファーウェイ)に対して数百万台のハードディスクドライブを出荷していたとされている(2023年4月21日記事参照)。また、輸出管理規則に関連する有罪判決は過去最多だったとも記した。

そのほか、輸出管理違反に関する自主開示や他者の違反に関する開示(2023年4月20日記事2023年7月27日記事参照)を促すための政策方針の明確化、省庁間や学術界、産業界、外国政府との連携強化、反ボイコット法(注)の執行強化などについても実績として挙げた。

BISは昨今、連邦議会から、特に中国に対する輸出管理規則の執行強化を迫られている(2023年12月15日記事参照)。今回の実績発表は2022年外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2023年1月4日発表)に続き、2回目となる。

(注)物品や技術、そのほかの情報の輸出などに従事している「米国人」〔米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す〕が、外国政府が米国の友好国に対して取っている制限的な貿易慣行、またはボイコット(取引拒否)政策などへの加担を禁止することなどを義務づける法律。違反した場合、罰金や禁固刑などの罰則が科される可能性がある。詳しくは商務省の解説ページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(赤平大寿)

(米国)

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