バイデン米政権、制裁・輸出管理違反の自主開示に関するコンプラガイドを公表

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月27日

米国商務省産業安全保障局(BIS)、財務省外国資産管理局(OFAC)および司法省は7月26日、米国の制裁や輸出管理など安全保障関連の法令違反にかかる自主開示についての法令順守用の文書(以下、コンプラガイド)を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

コンプラガイド公表に当たって3省庁の高官は、「企業こそが機微技術のゲートキーパーであり、金融システムへの主要な参加者であることから、米国産業界は国家安全保障において重要な役割を担う」「悪意のある者から米国の先端技術を守る上では、産業界が防衛の第一線」として、産業界に政府との緊密な連携を呼びかけた。コンプラガイド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、制裁など法令違反の迅速な自主開示は、罰則の軽減や訴追免除につながるとして、潜在的なものも含めて、いかなる違反についても発覚次第、政府に報告するよう促している。基本的には、3省庁がそれぞれの権限で既に規定している自主開示に関する規則と、最近公表した新たな政策方針の要点を説明する内容となっている。それぞれの要点は次のとおり。

司法省:刑事訴追を担当する司法省は、国家安全保障局(NSD)を通じて3月に公表した執行政策方針外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、刑事罰に相当し得る違反を自主的に開示し、NSDに全面的に協力し、違反状態を修正した企業については、訴追免除合意(NPA)を与え、罰金の支払いも不要となり得るとしている。同方針は、制裁・輸出管理法令のみならず、外国代理人登録法(FARA)や対米外国投資委員会(CFIUS)に関連する違反にも適用されるとしている。なお注意点として、BISやOFACなどの他省庁が管轄する規則違反であっても、それら省庁のみならずNSDにも直接、自主開示を行わなければならないとしている。

BIS:基本的に、2022年6月に導入した輸出管理規則(EAR)執行強化のための規則変更と(2022年7月4日記事参照)、2023年4月に公表したEAR違反の開示に関する政策方針(2023年4月20日記事参照)の要点を説明する内容となっている。

OFAC:基本的に、OFAC管轄の既存の規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの要点の説明となる。適正な自主開示を行った場合は、民事罰として科される罰金額を50%軽減することが認められるとしている。

コンプラガイドは最後に、財務省の金融犯罪取り締まりネットワーク(FinCEN)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが運用している違反告発者への報奨制度を紹介している。これは、米国内外を問わず、米国の制裁法令などへの違反事例を米国政府に通告した者に対して、実際に法執行で徴収した罰金の10~30%を報償として授与する制度となっている。結論として、自主開示は罰則の軽減につながるだけではなく、国家安全保障上脅威となる行為を政府に知らせるという点でも重要だとしている。

今回の3省庁を含め、経済安全保障に関わる連邦政府機関は、米国の法令違反に対する執行強化に向けた取り組みを進めており、今回のガイド公表もその一環とみられる(2023年5月18日記事参照)。

(磯部真一)

(米国)

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