米司法省、省庁横断の取り組みで輸出管理違反など5件の刑事訴追を公表

(米国、ロシア、中国、イラン)

ニューヨーク発

2023年05月18日

米国司法省は5月16日、「破壊的技術ストライクフォース」(以下、ストライクフォース)の取り組みの一環で、輸出管理違反などを理由に5件の刑事訴追を行ったと公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ストライクフォースは、司法省と商務省が中心となって2023年2月に設立した、全米12都市圏(注)で輸出管理の執行強化に取り組む専門部隊だ(2023年2月17日記事参照)。目的は中国、イラン、ロシア、北朝鮮など国家レベルの敵対者が米国の機微技術を取得し、軍事用途や人権侵害に利用することを防ぐことにある。今回の訴追は、ストライクフォースの設立以降で初めてとなる。

5件のうち2件は、ロシアの軍や諜報(ちょうほう)機関もしくは航空会社のために、米国の輸出管理法令違反となる機微な技術などの入手に関与していた事案で、3人の逮捕者が出ている。そのほかの2件は、中国に関連する事案となる。いずれもカリフォルニア州内で起きたもので、元エンジニアが米国のテック企業のソフトウエアおよびハードウエアのソースコードを中国の競合相手に渡そうとした事案だ。うち、一方の事案では、中国籍の元アップルのエンジニアに、同社の自動運転技術に関するソースコードを含む大量の書類を窃取した容疑がかけられている。同容疑者は既に中国に移動しており、同国に拠点を置く自動運転技術関連の企業に所属しているとみられている。残る1件は、ニューヨーク州での事案で、イランに大量破壊兵器やミサイル関係の物資を供給するためのネットワークに関連するもの。中国籍の容疑者が雇用主に働きかけて、イランの事業体のために米国金融機関と取引するよう仕向けたことが罪状となっている。

司法省のマシュー・オルセン次官補は「これら訴追は、機微な技術がロシアや中国、イランを含む敵対国の手に落ちることを防ぐという司法省の責任を示すものだ」との声明を出している。商務省のマシュー・アクセルロッド次官補は「スマートな自動車製造装置のためのソースコードや、量子暗号技術を開発するための製品など、米国の機微な技術を、敵対国が違法に入手することから守ることこそが、ストライクフォースを設立した理由だ」としている。このほか、連邦捜査局(FBI)および国土安全保障省国土安全捜査局(HSI)高官も同様の声明を出しており、関連省庁が一体となって機微技術の保護に取り組んでいる点を強調している。最近では、商務省が米国ハードディスク装置大手シーゲイトに対して過去最高となる罰金を科すなど、輸出管理に関する執行事例が増えている(2023年4月21日記事参照)。

(注)アトランタ、ボストン、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンノゼ、フェニックス、ポートランド、首都ワシントン。

(磯部真一)

(米国、ロシア、中国、イラン)

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