EUの2023年の乗用車新車登録台数、4年ぶり前年比プラス、BEVがディーゼル超え

(EU)

ブリュッセル発

2024年01月24日

欧州自動車工業会(ACEA)は1月18日、EUの2023年の乗用車の新車登録台数(暫定値)は前年比13.9%増の1,054万7,716台だったと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、添付資料表1、図参照)。新型コロナウイルス感染拡大以前の2019年の水準には達しなかったが、ハンガリーを除く全ての国で前年比プラスとなり、4年ぶりに1,000万台を超えた。最大市場のドイツは前年比7.3%増にとどまったが、イタリア(18.9%増)やスペイン(16.7%増)、フランス(16.1%増)など多くの国で2桁増となった。

主要メーカーグループ別の市場シェアは、フォルクスワーゲン(VW、26.1%)、ステランティス(17.8%)、ルノー(10.9%)、現代(8.4%)、トヨタ(6.9%)の順で、2022年と変わりなかった(添付資料表2参照)。

日本メーカーでは、レクサスの新車登録台数の伸びが前年比56.7%増の約4万台と好調で、トヨタグループ全体の登録台数は9.9%増の約73万台だった。日産、スズキ、マツダの登録台数はいずれも前年比約2~4割の伸び率で、約15万~20万台に増えた。電気自動車(EV)で人気を集めるテスラは前年比89.2%増の約28万台で、市場シェアは前年の1.6%から2.6%に拡大した。

2023年もBEVの躍進続き、ディーゼル車追い越す

燃料タイプ別でみると、最も多かったのはガソリン車で、前年比10.6%増の約372万台だった。ガソリン車の台数が前年比プラスとなったのは4年ぶりだが、新車登録台数全体に占める割合は35.3%と、前年から1.1ポイント減少した。続いて、ハイブリッド式電気自動車(HEV)が前年比29.5%増の約272万台と、全体の25.8%(3.1ポイント増)を占めた。バッテリー式電気自動車(BEV)は初めてディーゼル車を上回って3位となり、前年比37.0%増の約154万台、全体の14.6%(2.5ポイント増)を占めた。ディーゼル車は前年比5.8%減の約143万台〔全体の13.6%(2.8ポイント減)〕、プラグインハイブリッド車(PHEV)は前年比7.0%減の約81万台〔全体の7.7%(1.7ポイント減)〕だった(添付資料表3参照)。PHEVの新車登録台数は多くの国で前年比プラスだったが、2022年はEU全体の約4割を占めた最大市場ドイツで、PHEVへの購入補助金制度が2022年末に廃止された影響もあり、登録台数がほぼ半減したことが響いた(2024年1月15日記事参照)。

EUでは2020年以降、EV販売台数が急速に伸びているが、その追い風の1つとなったのが各国で実施されているEV購入支援策だ。しかし、ドイツでは2023年12月、BEVを含む低排出ガス車購入時の助成制度の終了が突如1年前倒しされた(2023年12月25日記事参照)。フランスでは、環境奨励金(補助金)制度の適用対象モデルを製造・輸送過程の二酸化炭素(CO2)排出量をベースとし、2023年12月15日以降、比較的安価なダチア(ルノーグループ)「スプリング」や中国MGの「MG4」など中国製車は対象から外れた(2023年12月21日記事参照)。2023年のドイツとフランスのBEV新車登録台数を合計すると、EU全体の53%を占める。両国の補助金制度の打ち切りや内容変更が2024年のEUのBEV販売動向にどのような影響を与えるか注目される。

(滝澤祥子)

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