在欧日系企業の6割超が人材不足に直面、中・東欧で顕著
(欧州)
調査部欧州課
2023年12月26日
ジェトロは12月26日、「2023年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を発表した(2023年12月26日記事参照)。調査結果によると、人材不足の課題に直面している在欧日系企業は全体で6割を超え、業種別では製造業が66.9%、非製造業は60.7%だった。地域別では、西欧で製造業が64.8%、非製造業59.3%、中・東欧では製造業が74.1%、非製造業73.2%で、中・東欧の製造業が相対的に最も深刻な結果となった。
職種別の人材不足の深刻度合いについて、「とても深刻」や「やや深刻」と回答した企業は、西欧では専門職種(法務、経理、エンジニアなど)が63.5%、中・東欧では工場作業員が74.6%で、それぞれ1位となった。
ベースアップのほか、外国人材の積極的な受け入れなどで対応
こうした人材不足の課題に対して、人材採用・定着に関する具体策について企業に回答を求めたところ、西欧、中・東欧共通で多くの企業がベースアップの実施を挙げた。一方、同調査では、2023年の基本給のベースアップ率(名目、平均値)は対象国の半数以上で現地インフレ率を下回る結果となり、ベースアップがインフレに追い付いていない現状も明らかになった。特に中・東欧でその傾向が顕著に現れ、ハンガリーとチェコでは、2023年の基本給のベースアップ率が現地インフレ率を3ポイント以上下回った。
ベースアップ以外の人材不足の課題に対する具体策として、西欧では業種を問わずに多くの企業が働き方に関する施策として、在宅勤務制度やフレックス勤務制度を実施し、成果を上げていることがわかった。中・東欧では、人材不足が深刻な製造業を中心に、第三国の外国人の採用や外国人向けの母語によるOJTの実施など、外国人材の活用が多くの企業で実施されていることが明らかになった。
外国人材の活用を巡っては、欧州委員会が11月15日、現在の人手不足に対応するには域外からの人材の積極的な受け入れが必要だとし、EU域外の人材確保を目指す政策パッケージを発表している(2023年11月21日記事参照)。同政策パッケージは、人材を募集するEU域内の雇用主とEU域外国の求職者のマッチングプラットフォームの設置や、EU域外国の求職者の資格の認定手続きを簡略化・迅速化などからなり、産業界からも一定の評価を得ている(2023年11月24日記事参照)。
調査結果の詳細は、ジェトロ調査レポート「2023年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を参照。
(奈良陽一)
(欧州)
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