欧州委、EUの雇用主と域外求職者のマッチング・プラットフォーム設置を提案

(EU)

ブリュッセル発

2023年11月21日

欧州委員会は11月15日、EU域外からの人材確保を目指す政策パッケージを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同政策パッケージは、人材を募集する域内の雇用主と域外国の求職者のマッチングを支援するための「EU人材プール」を設置するための規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと、域外国の求職者の資格の認定手続きを簡略化・迅速化させるための勧告などからなる。EU域内では、失業率は2023年9月時点で6.0%と低水準が続く中、2022年の欠員率は2.9%と10年で2倍以上に増加しており、人手不足が課題となっている。EU市民のリスキリング(新たな技能の習得)を進める一方で、高齢化に伴う労働人口の減少が予想されており、欧州委は、人手不足に対応するためには域外からの人材の積極的な受け入れが必要だとしている。規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会において審議される。

規則案によると、EU人材プールは、EU域外に居住する加盟国国籍を持たない求職者とEU人材プールに参加する加盟国で設立された雇用主(企業や個人など)とのマッチングを支援する、EUレベルでは初のオンライン・プラットフォームだ。域外国の求職者は同プラットフォームに、履歴書に相当するプロフィールを登録することができる。参加加盟国内の雇用主は、指定職種の求人情報を同プラットフォームに掲載することができる。登録済みの求職者および雇用主は、同プラットフォーム上で求職・登録情報を検索することができるほか、技能、資格、職歴などの条件に基づく自動マッチング機能もある。

雇用主が同プラットフォームを通じて求人募集を行える職種は、EU全体で人手不足となっている職種に限定される。一方で、指定職種の技能レベルには制限がなく、規則案付属書は、EU全体で人手不足の職種として、エンジニア、医療従事者、IT技術者から、飲食業や建設業の従事者まで42職種を指定している。加盟国によるEU人材プールへの参加は任意で、参加する場合も自国の労働市場の状況に応じて、指定職種を修正することができる。また、規則案は加盟国のビザ手続きに変更を加えるものではないものの、採用プロセスを円滑にするために、ビザや雇用の手続きに関する情報のほか、社会保障など労働者の権利に関する情報などが、同プラットフォームを通じて提供される。

このほか、欧州委は、域外国で取得した資格の認定手続きに関する勧告も採択した。域外国の求職者が加盟国で特定の資格が求められる専門職としてビザを申請し、当該専門職に従事する場合、加盟国当局による公的な認定が必要となる。同勧告には、処理期間の短縮化や、翻訳や認証プロセスの簡略化といった参加加盟国が実施すべき措置が含まれている。また、資格などにより規制されていない職種の採用においては、資格認定は不要にすべきとしている。

(吉沼啓介)

(EU)

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