ウクライナ情勢やグリーン規制が引き続き大きく影響、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(欧州編)

(欧州、ウクライナ、日本)

調査部欧州課

2023年12月26日

ジェトロは12月26日、「2023年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を発表した。調査は9月1~25日に実施し、西欧14カ国、中・東欧9カ国(注)の日系企業1,457社が対象。うち830社から有効回答を得た(有効回答率57.0%)。主なポイントは次のとおり。

(1)ウクライナ情勢:前年に続き、ウクライナ情勢が在欧日系企業の経営上の問題点の1位となった。他方で、ウクライナの復興支援・ビジネス活動に関心があると回答した企業は5割弱に上った。また、約1割の企業が将来有望な販売先としてウクライナを選んだ。

(2)注目するEUの政策・規制:上位の10項目をグリーン・サステナビリティー関連が占め、特に2023年10月に移行期間が始まった「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」が3割超の回答割合で、最も注目度が高かった。

(3)2023年の営業利益見通し:2023年に営業利益の黒字を見込む企業は約7割と、新型コロナウイルス禍前の水準にさらに接近した。今後1~2年の事業を「拡大」するとの回答が2年ぶりに「現状維持」を上回り、過半だった。

(4)サプライチェーン:今後1~2年のサプライチェーン戦略については、5割超の企業が「調達の多様化」、約4割の企業が「サプライチェーンの短縮化・ニアショアリング」と回答した。中国からの調達を「縮小」させるとの回答が目立ち、特に中・東欧では同割合が4割弱だった。

(5)雇用環境:人材不足の課題に直面している在欧日系企業は6割を超えた。業種別では製造業、地域別では中・東欧で顕著で、特に中・東欧の製造業では7割超と最も深刻な結果となった。

(6)人権・脱炭素:サステナビリティー関連の取り組みでは、約9割の企業がサプライチェーンの人権問題を重要な経営課題として認識していると回答し、前年の約7割から大きく伸びた。脱炭素化に取り組んでいる企業の割合は6割超だった。

(注)西欧はドイツ、英国、オランダ、フランス、ベルギー、スペイン、フィンランド、アイルランド、スイス、オーストリア、ポルトガル、イタリア、スウェーデン、デンマークの14カ国、中・東欧はチェコ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、セルビア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、北マケドニアの9カ国。

(牧野彩、森友梨)

(欧州、ウクライナ、日本)

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