スリランカ経済サミット開催、将来展望について有識者が議論

(スリランカ)

コロンボ発

2023年12月15日

セイロン商工会議所(Ceylon Chamber of Commerce)は11月28~29日、「スリランカ経済サミット」を開催した。スリランカ経済の現状や今後の成長戦略について、政治家や経営者など有識者が議論した。

ラニル・ウィクラマシンハ大統領は、経済危機の再発を避け国内経済を持続的に発展させるためには、財政の均衡を図りつつ輸出競争力のある産業の創出に向けた抜本的な構造改革が不可欠だと述べた。大統領は、政府の構造改革による経済の進展を強調し、重要な成果として国の債務をめぐる債権者との交渉の成功を挙げた。特に、日本やインド、フランスが主導する債権国会合および中国輸出入銀行との複雑な交渉をうまく進めたと指摘し、2023年12月中にはIMF理事会が金融支援パッケージ〔拡大信用供与(EFF)プログラム〕の初回審査を完了するという見立てを示した(2023年10月26日記事参照)。さらに大統領は、デジタル分野を中心とした輸出志向型の経済を目指すとともに、今後、各国と自由貿易協定の締結を進める考えを示した。

インドの旧計画委員会で副委員長を務めたモンテク・シン・アルワリア氏は、スリランカはアジアの国で初めてIMFからガバナンスに関する診断を受けた国であり、診断内容を正しく理解し、しかるべき人材と体制のもとで適切な制度を構築しなければならないと述べた(2023年10月6日記事参照)。同氏は加えて、貧困層との対話により構造改革への理解を獲得するよう求めた。

財務省・経済安定化・国家政策省のマヒンダ・シリワルダナ事務次官は、2024年度(2024年4月~2025年3月)の国家予算に合わせ、課税対象の拡大と免税措置の撤廃を進めるとともに、税徴収管理やデジタル化を通じ歳入を増やさなければならないと述べた(2023年11月28日記事参照)。加えて、政府の施策として透明性の高いシステムの導入や歳出報告書の公表、港湾空港税(PAL)の撤廃または削減を検討していると説明した。

スタンダード・チャータード銀行スリランカ支店CEOのビングマール・テーワラタントゥリ氏は、不良債権を迅速に処理し経済の回復を支援するため、スリランカに破産裁判所を設立することを提案した。

財務省・経済安定化・国家政策省国営企業再編ユニット長のスレーシュ・シャー氏は、現在スリランカ政府が進めている国有企業改革に言及し(2023年10月20日記事参照)、現状の国営企業をめぐる問題として、補助金の過剰な支出、理事会の機能不全、人員過剰、資産の不正使用などを挙げ、売却による改革の重要性を強調した。

電力・エネルギー部門の構造改革を進めるカーンチャナ・ウィジェーセーカラ電力・エネルギー相は、現状の電力・エネルギー分野の国有企業では、給与体系が効率的ではなく、人材を引きとめるため業績に基づくインセンティブ制度の導入を検討していると述べた。

現地大手財閥ジョン・キールズ・ホールディングス会長のクリシャーン・バーレーンドラ氏は、観光客を誘致するため海外でのマーケティング・キャンペーンの強化を提案した。

衣料品を製造するヒルダラーマニ・グループ会長のウィノード・ヒルダラーマニ氏は、外国企業誘致に向けて適切なインフラと企業の進出や撤退に関する制度の整備が重要だと指摘した上で、スリランカは人権や環境に配慮した生産活動が展開されており、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する欧州の顧客から高く評価されていると語った。

生活用品を製造・販売するユニリーバ・スリランカ会長兼マネジングディレクターのハジャール・アラフィフィ氏は、様々な困難はあるものの、同社はスリランカで事業を継続的に拡大していると説明した。同氏は、ビジネスのしやすさとコストという観点で、現在はスリランカに投資する最良の時だと述べた。他方、スリランカでは突然の政策変更が課題だと指摘し、3年から5年程度の安定した政策や、政策を変更する場合には半年前の通達を提案した。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)

(スリランカ)

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