米エネルギー省、2023年のクリーンエネルギー利用の主な取り組み紹介
(米国)
ニューヨーク発
2023年12月25日
米国エネルギー省(DOE)は12月21日、バイデン政権と同省による2023年のクリーンエネルギーに係る主な取り組みを発表した。主な内容は次のとおり。
(1)クリーン水素ハブの立ち上げ(2023年10月16日記事参照)
(2)送電網への歴史的な投資
- 以下のプロジェクトをはじめ、送電網に関して約80億ドルを投資。
-
グリッド・レジリエンス・イノベーション・パートナーシップ
を通じ、送電網の現代化と強化のために、44州の58プロジェクトに対して35億ドルの投資を発表
-
3.5ギガワット(GW)の送電容量の増量や、1万3,000人を超える直接・間接雇用を創出することを目的とした送電促進プログラム
に、13億ドルの送電投資を実施
- 送電網の回復力を高めるべく、州、部族、準州・地域に対して、補助金として7億5,000万ドル強を投資
- 水力発電のインセンティブとして3,700万ドルを投資
(3)全米電気自動車(EV)充電ネットワークの構築
- EV用充電器のコンソーシアム(2023年5月25日記事参照)の立ち上げ
- NEVIフォーミュラプログラム(2022年9月29日記事参照)を通じて資金提供されたEV充電ステーションの開設(注1)
(4)米国民のコスト削減
-
住宅用ビルのコスト削減や、クリーンエネルギー経済の恩恵が全てのコミュニティーに行きわたるようにするための研究開発のブレークスルーを加速するべく、家庭用エネルギー・アースショット
を立ち上げ(2023年12月15日記事参照)
-
エネルギー効率・保全一括プログラム(EECBG)
を通じて、対象となる2,700以上の州、地方自治体、準州・地域、部族がエネルギー効率の改善などのために、5億5,000万ドルを活用可能にした
(5)環境正義の重視
- インフレ削減法(IRA)のクリーン電力への投資に対する税額控除(48e)で、財務省と内国歳入庁(IRS)と共同で規定した低所得地域ボーナス・クレジット・プログラムの受け付けを開始し、十分なサービスを受けられていない地域のコスト削減に尽力
- 先住民族のコミュニティーに7,500万ドル以上を投資し、これらのコミュニティーでのクリーンエネルギー技術のアクセス拡大、エネルギーコストの削減、部族のエネルギー主権(注2)の改善に貢献
(6)次世代のクリーンエネルギー人材の育成
-
過小評価されているコミュニティーで太陽光エネルギー人材を育成するべく、12の研修パッケージ
に1,350万ドルを投資
- 住宅の脱炭素化を推進できる専門家を養成するべく、州の住宅エネルギー効率化トレーニングプログラムを支援(1億5,000万ドル)するほか、商業用・住宅用建築物のエネルギー監査を行う人材を訓練するエネルギー監査員プログラムを支援(4,000万ドル)
(7)国内製造とサプライチェーンの強化
- EVやバッテリーなどへの投資として55億ドル、先端技術車両製造(ATVM)ローンプログラム(2022年12月13日記事参照)へのコミットメントに130億ドル、全国15カ所で行われる電気ヒートポンプの製造加速への投資として1億6,900万ドル、太陽光発電、風力発電、自動車の国内製造の拡大に3億9,000万ドル以上を投資
このほか、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で発表された、プエルトリコの脆弱(ぜいじゃく)性の高い家庭(注3)へのコミットメント強化(2023年12月15日記事参照)や科学技術面での取り組みの進展、DOEの所有地での取り組みなども紹介されている。
(注1)12月にオハイオ州とニューヨーク州で初めて開設された。
(注2)エネルギー関連の権利を市民やコミュニティーが取り戻すこと。
(注3)超低所得者世帯の割合が高く、頻繁かつ長期にわたる停電が発生する地域に住んでいるか、移動に電動車いすを使用したり人工透析器を使用したりしているなど障害を持つ家庭。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 218f1764b0fc0db3