バイデン米政権、水素ハブ7拠点を選定

(米国)

ロサンゼルス発

2023年10月16日

米国のバイデン政権は10月13日、インフラ投資雇用法(IIJA)に基づき、総計70億ドルの資金提供を受ける7つの水素ハブ(Regional Clean Hydrogen Hubs)を選定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。選定された水素ハブは次の7拠点。

〇中部大西洋岸水素ハブ(MACH2:Mid-Atlantic Clean Hydrogen Hub、ペンシルベニア州、デラウェア州、ニュージャージー州):歴史的石油インフラの再利用や既存道路の利用などを通じて、中部大西洋岸の水素主導の脱炭素化を支援。電解槽の既存技術と革新的技術の双方を用いて、再生可能エネルギーと原子力発電による水素製造施設を開発予定(金額:最大7億5,000万ドル)。

〇アパラチア地域水素ハブ(ARCH2:Appalachian Regional Clean Hydrogen Hub、ウェストバージニア州、オハイオ州、ペンシルベニア州):同地の天然ガスへの安価なアクセスと、水素の製造工程で排出される二酸化炭素(CO2)の回収・貯留を通じて、低コストでクリーンな水素を製造する。それに加え、水素パイプライン、複数の水素ステーションの開発により、水素の流通・貯蔵のコスト低減を目指す(金額:最大9億2,500万ドル)。

〇カリフォルニア水素ハブ(ARCHES:Alliance for Renewable Clean Hydrogen Energy Systems、カリフォルニア州):再生可能エネルギーとバイオマスのみを利用した水素製造に取り組む。同州の主な温室効果ガス(GHG)排出源で、脱炭素化が最も困難な大気汚染源の1つの公共交通機関、大型トラック輸送、港湾業務について、水素を活用した脱炭素化を目指す(金額:最大12億ドル)。

〇メキシコ湾岸水素ハブ(HyVelocity Hydrogen Hub、テキサス州):テキサス州ヒューストンを中心に設立。炭素回収を前提とし、メキシコ湾岸地域の豊富な天然ガスと再生可能エネルギーの供給による電気分解を活用した大規模な水素製造で、水素コストの引き下げを目指す(金額:最大12億ドル)。

〇ハートランド水素ハブ(Heartland Hydrogen Hub、ミネソタ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州):地域の豊富なエネルギー資源を活用し、農業セクターの肥料生産の脱炭素化、クリーン水素の地域コストの削減、クリーン水素による発電や寒冷地での暖房利用を促進する(金額:最大9億2,500万ドル)。

〇中西部水素ハブ(MachH2:Midwest Alliance for Clean Hydrogen、イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州):鉄鋼・ガラス生産、発電、精製、大型輸送、持続可能な航空燃料など、戦略的な水素利用を通じて脱炭素化を実現する。再生可能エネルギー、天然ガス、低コストの原子力エネルギーなど、多様で豊富なエネルギー源を活用して水素を製造する予定(金額:最大10億ドル)。

〇パシフィック・ノースウエスト水素ハブ(PNW H2; ワシントン州、オレゴン州、モンタナ州):再生可能資源だけからクリーンな水素を製造することを計画。電解槽の大規模な利用により、電解槽のコスト引き下げにつなげる(金額:最大10億ドル)。

これら水素ハブの一部には、複数の日系企業が既に参画しているが、今回の発表を受け、各ハブが詳細計画を策定していくに当たり、さらなるパートナーシップ・連携が具体的に加速していくと考えられる。

バイデン政権はこれら水素ハブにより、合計で年間300万トン以上のクリーン水素を生産し、2030年の米国のクリーン水素生産目標の約3分の1を達成することを目指しており、年間2,500万トンのCO2排出が削減されることになる。水素ハブの選定は官民合わせて総額500億ドル近い投資をもたらすことが期待され、クリーン水素製造と雇用への投資としては米国史上最大規模のものとなる。

(津脇慈子、真愛・ジョン、森雄彦)

(米国)

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