米NY州とウーバーとリフト、運転手への総額3億ドル超の未払金支給で合意

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月06日

米国ニューヨーク(NY)州のレティシア・ジェームズ司法長官(民主党)は11月2日、ライドシェア大手のウーバーとリフトと、個人事業主として勤務する運転手に支払うべき賃金に不払いがあったとして、総額3億2,800万ドルの和解金支払いで合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは、ウーバーとリフトが運転手の給与の一部から利用者が支払うべき消費税などを管理費として差し引いていたこと、ならびにNY州の労働法の下で認められている手当の受給を妨げていたことが数年に及ぶ調査で判明したことに基づく。

和解金3億2,800万ドルのうち2億9,000万ドルはウーバーが、3,800万ドルはリフトが、それぞれ現職または過去に両社の下で勤務していた運転手に支払う。このほか、両社が最低賃金の設定や有給病気休暇の提供、適切な雇用と収入に関する通知を含む労働条件の改善の実施が合意された。

ジェームズ司法長官は「これらの和解により、彼ら(運転手)はようやく支払われるべき賃金を、法律に従い当然に獲得できることとなった。われわれは、ギグ・エコノミー(注1)で営業する企業が労働者から権利を奪い、労働者を保護するための法律を弱体化することのないよう引き続き徹底していく」とした。

新型コロナ禍を経て、米国物流大手UPS(2023年8月28日記事参照)や自動車業界(2023年11月2日記事参照)では、労働組合の働きかけによる昇給の合意がされたほか、カリフォルニア州のファストフードチェーン店でも最低時給が引き上げられるなど(2023年10月3日記事参照)、労働条件の改善が相次いでいる。一方で、ウーバーとリフトに関しては、労働者(運転手)が個人事業主であるため最低時給が定められておらず、時給換算するとNY州で義務付けられている最低賃金を満たしていないことが問題となっていた。NY市内でサービスを提供する両社の運転手については、2019年に同市のタクシー・リムジン委員会が設定した最低時給27.86ドルが既に適用されていたが、州内NY市外の運転手については、今回の和解で最低時給26ドルが新たに設定された。

ウーバーについては、ライドシェアサービスとは別に同社が提供しているフードデリバリーにおいても、配達員へ支払う賃金が十分ではないとして、NY市から6月に最低賃金が設定された。ウーバーを含む3社が対象となっていたが、これらアプリ会社からの要望で一時的に差し止めが認められていた(2023年7月13日記事参照)。その後、NY州最高裁は9月28日、ウーバー、ドアダッシュ、グラブハブ(注2)を対象に一時差し止めを撤廃し、市が設定した、これらアプリを利用してデリバリーを提供する配達員に対する最低時給17.96ドルを認めた。

(注1)労働者を正規雇用ではなく、個人事業主として雇い成り立っているシステム。

(注2)リレーは最終的には対象外となった。

(吉田奈津絵)

(米国)

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