米チームスターズ、UPSとの新たな労働契約批准、発効に1つの補足契約の再交渉を残す

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月28日

米国物流大手UPSを代表する労働組合のチームスターズは8月22日、今後5年間の新たな労働契約を批准したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。暫定合意の受諾を組合員に問う投票では、賛成票が86.3%に達し、同組合史上最高の得票率での批准となった。

UPSとチームスターズは過去数週間にわたる協議で、主に組合員の約半数を占めるパートタイム労働者の賃上げを巡る問題で対立していたが、7月下旬に暫定合意に達した。その後、米国とプエルトリコで176支部の代表者による会合が開かれ、労働者約34万人以上が対象となる契約内容について投票が行われることになっていた(2023年7月28日記事参照)。

チームスターズの声明によると、新たな労働契約には、全ての労働者の賃金引き上げやフルタイムの雇用創出、職場環境の改善などが含まれている。特に争点となっていた賃金引き上げについては、暫定合意をそのまま盛り込み、(1)フルタイムとパートタイムを問わず、時給を2023年内に2.75ドル、5年間の契約期間内に合計7.50ドル引き上げる、(2)現在雇用されているパートタイム労働者の時給を直ちに21ドル以上に引き上げる、(3)現在雇用されているパートタイム労働者の年功賃金を(1)の時給に加えて、最大1.50ドル引き上げるなどとした。また、車内環境の改善として、暫定合意では全車両への2基のファンと貨物室の空気導入口の取り付けを約束していたが、今回、これに排熱シールドを盛り込んだ。

UPSとチームスターズの労働契約は全国基本契約と補足契約の2階層に分かれている(注)。今回、フロリダ州の組合員174人を対象とする補足契約を除く全ての補足契約も批准された。この残り1つの補足契約が再交渉・批准されれば、全国基本協約が発効する。

発表の中で、チームスターズのショーン・オブライエン会長は「チームスターズは新たな基準を設定し、宅配業界の給与、福利厚生、労働条件の水準を引き上げた。これは、全国の労働者がどのように賃金を支払われ、保護されるべきかのひな型になる」と述べた。

(注)(1)賃金、医療、年金などの項目について説明が記載されている全国基本契約(NMA)と、(2)国内の特定地域に限定した内容が記載され、40以上の補足事項と特約が含まれる補足契約の2階層。

(樫葉さくら)

(米国)

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