政府、原子力由来電力の卸市場価格でフランス電力と合意

(フランス)

パリ発

2023年11月24日

フランス政府とフランス電力(EDF)は11月14日、EDFの原子力由来電力の卸価格を2026年から1メガワット時(MWh)当たり70ユーロの水準に設定することで合意したと発表した。

政府はEDFを完全国有化し(2023年6月16日記事参照)、6基以上の原子炉新規建設などのプロジェクトを推進する(2022年2月17日記事参照)。一方、EDFが民間の電力小売事業者に原子力由来電力の一部を固定価格で卸売りする「原子力電力への規制アクセス制度(ARENH)」が2025年末で終了することから、新たな制度の導入を巡ってEDFと交渉を進めていた。

EDFは現在、年間100テラワット時(TWh)を上限に、1MWh当たり42ユーロの固定価格で原子力由来電力を小売業者に販売しているが、現行の固定価格は原子力発電量の約3分の1にしか適用されていない。今回の合意は、原発の総発電量に対して発電コストに見合った1MWh当たり70ユーロの価格水準を保証するもので、一般世帯向け電力料金の長期的な安定につながると説明した。

電力料金が同水準を上回る場合は、EDFの収益を消費者(民間企業を含む)に還元する仕組みを導入することでも合意した。これは、2023年10月にEU理事会(閣僚理事会)が交渉上の立場について合意に達した電力市場改革法案に対応したもので(2023年10月20日記事参照)、政府は二重の差額決済契約(CfD)義務化の適用対象に原発への投資を盛り込むよう求めていた(2023年7月20日記事参照)。

今回の合意ではまた、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰を受けて、2022年に導入した従業員数10人未満で年間売上高200万ユーロ未満の全ての企業に向けた電力価格抑制措置(2022年11月1日記事参照)について、2026年以降は36キロボルトアンペア(kva)という閾値(いきち)をなくした上で継続すること、また、フランスの再工業化を促進するため、製造業向けに10年単位の電力長期契約を導入することでも合意した。

ブリュノ・ル・メール経済・財務・産業およびデジタル主権相は「国内製造業の競争力、家庭向け電力料金の安定、EDFの事業拡大に向けたバランスのとれた合意に達することができた」と評価した。

(山崎あき)

(フランス)

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