欧州産業連盟、EU米首脳会談を前に米国商工会議所と共同声明を発表

(EU、米国)

ブリュッセル発

2023年10月19日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は10月16日、EUと米国が10月20日に米国首都ワシントンで首脳会談を行うのを前に、米国商工会議所と共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。両団体は、EUと米国の協力推進は両者が直面する地政学的・経済的課題への対応や特定の国・地域の不公正な市場慣行への対抗、双方の経済成長にとって極めて重要と位置付けている。今回の首脳会談を通じ、(1)保護主義の否定と公正な競争の実現、(2)鉄鋼・アルミニウム関連の係争の解決とEU・米国の協力関係深化に向けた努力、(3)革新的・新興技術やサービス、製品に関し過剰な規制や異なる規制を避け、対話による協力促進を要請した。

声明によると、(1)について、両団体は、経済低迷への懸念から保護主義的な動きが高まっており、あらゆる部門において研究開発や投資・貿易、人材確保に影響が出ると危惧。EUと米国はそれぞれ、グリーンディール産業計画(2023年2月3日記事参照)とインフレ削減法(2022年10月6日付地域・分析レポート参照)という競争力強化策を打ち出したが、こうした施策が外国企業に対する参入障壁や不平等な規制となってはならないと訴えた。

(2)に関して、EUと米国は2021年10月に、米国による1962年通商拡大法第232条に基づくEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入への追加関税(232条関税)賦課を発端とした係争解決に向け合意した(2021年11月2日記事参照)。両団体は、同係争の恒久的な解決を求めると同時に、鉄鋼・アルミニウムの世界的な供給過多や生産時の二酸化炭素(CO2)排出削減に連携して対処するよう求めた。また、重要鉱物の生産拡大に向け、EUと米国は技術面における研究開発も含め第三国・地域と協力し、供給元の多角化や高付加価値を生み出す産業部門への安定的かつ持続可能な供給を保証すべきとした。

(3)に関しては、両団体はEUと米国の協力推進の場として、新興技術の管理や国際的な通商課題での連携を目指し設立されたEU米貿易技術評議会(TTC、2023年6月6日記事参照)を重視する。まず、競争や研究開発を阻害し、企業の経済活動に影響を与える過剰な規制に反対し、「新たな貿易紛争を生む政策提案を回避させる」というTTCの当初目的を念頭に、TTCで懸念事項を洗い出すよう促した。次に、これまでのTTCでのエネルギー安全保障やクリーンエネルギー政策分野における成果を評価したうえで、さらに具体的な成果が必要だと指摘。2024年にEUは欧州議会選挙、米国は大統領選挙を控えることから、新興技術、貿易障壁の撤廃や環境などへの負荷が少ない製品の貿易促進のほか、第三国の不公正な市場慣行への対抗を名目とした一方的な貿易救済措置の実施の抑止など、多分野での交渉を加速させるべきとした。さらに、EU・米国間で交渉の成果を実現していくには、双方の近隣諸国も含んだ大西洋地域のバリューチェーンの構築を考慮することや、TTCの成果の具体化にあたってはステークホルダーとの協力継続が必要だとした。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

ビジネス短信 87c5e4b973f12514