米国、EUと鉄鋼・アルミ貿易で合意、追加関税に関税割当導入

(米国、EU、中国、日本、英国)

ニューヨーク発

2021年11月02日

欧州を訪問中のジョー・バイデン米国大統領は10月31日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と、鉄鋼・アルミニウム貿易に関する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。米国はトランプ前政権から継続している1962年通商拡大法232条に基づくEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入に対する追加関税(232条関税)について、一定数量まで追加関税を課さないとする関税割当(TRQ)を導入する。EUは、米国からの輸入の一部に課していた報復関税を停止する。また、米国とEUは今後、鉄鋼・アルミをめぐる炭素排出と過剰生産問題に取り組む世界的な取り決め「世界持続可能鉄鋼取り決め」に関して交渉を進める。

232条関税は2018年3月以降、個別の交渉により適用除外またはTRQの扱いを受けた国(注)以外からの鉄鋼、アルミ輸入に対して課されている。追加関税率は鉄鋼が25%、アルミが10%となっている。米EUは本件を含む世界的な鉄鋼・アルミの過剰生産問題の解決に向けた協議を2021年5月に開始していた(2021年5月20日記事参照)。その後、6月にEU側が予定していた報復関税の拡大を6カ月停止するなど一定の進展があり、今回の合意に至ったとみられる(2021年6月16日記事参照)。両者は232条関税をめぐるWTOでの紛争解決手続きも停止することで合意した。

米商務省が発表したTRQの詳細PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、開始は2022年1月1日からとしており、鉄鋼輸入に関しては、付属書1で指定した54の品目群につき年間330万トンまで232条関税の適用がなくなる。アルミ輸入に関しては、付属書2で指定した2つの品目群(未加工製品)につき年間1万8,000トンまで、14の品目群(半加工製品)につき年間36万6,000トンまで232条関税の適用がなくなる。申請ベースの品目別追加関税適用除外制度は従来どおり継続するとしている。ただし、鉄鋼に関してのみ、適用除外が認められた製品輸入はTRQには含めない上、米国の2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の間に承認した除外申請については再申請なしで除外効果を2023年12月31日まで延長すると記載している。

世界持続可能鉄鋼取り決めに関しては、2024年までの妥結を目指し、その第一歩として鉄鋼・アルミの炭素排出量に関するデータ共有と共通の計測方法を策定する作業部会を立ち上げる。米政権のファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにあるとおり、中国を含む他の国からの安価で炭素集約的な鉄鋼・アルミの流入を制限することが目的となる。この取り決めは関心のある全ての有志国に開かれているとしている。

なお、商務省は日本外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英国外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとも個別に、鉄鋼・アルミ貿易をめぐる2国間や多国間の問題について緊密に協議を行っているとしており、民主的価値観を共有する同盟国として正常な市場を取り戻し、炭素排出の問題に対して協力して取り組みたいとの声明を発表している。

(注)232条関税の適用除外または輸入数量割当対象国は次のとおり。

  • 鉄鋼の適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
  • 鉄鋼の数量割当:アルゼンチン、ブラジル、韓国
  • アルミの適用除外:オーストラリア、カナダ、メキシコ
  • アルミの数量割当:アルゼンチン

(磯部真一)

(米国、EU、中国、日本、英国)

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