第4回EU米国貿易技術評議会を開催、欧州委はAI行動規範の早期提案を明らかに
(EU、米国)
ブリュッセル発
2023年06月06日
EUと米国は5月31日、EU米国貿易技術評議会(TTC)の第4回閣僚会議をスウェーデンのルレオで開催し、生成AI(人工知能)対策を加速させることなどを盛り込んだ共同声明を発表した。
TTCは、民主的価値に基づき新興技術や貿易面での課題に対応する新たな協力枠組みとして、2021年のEU米首脳会談(2021年6月16日記事参照)で合意されたもので、第1回(2021年9月30日記事参照)の開催以降、10の作業部会で協議が進められている。今回の会議には、EUからはバルディス・ドムブロフスキス執行副委員長(経済総括、通商担当)、マルグレーテ・ベスタエアー執行副委員長(欧州デジタル化対応総括、競争政策担当)らが、米国からはアントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、キャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表が参加した。
生成AIの急速な普及を受け、会議の焦点の1つとなったAI規制の在り方に関しては、第3回会議(2022年12月6日記事参照)以降、両者が取り組みを進めている「信頼できるAIの開発・運用に向けた共同ロードマップ」において、生成AIを重点課題とすることで合意した。
AI規制をめぐっては、欧州委員会は2021年4月にAI規制枠組み法案(2021年4月23日記事参照)を発表したものの、現時点では成立のめどが立っていない。2023年内に成立した場合でも、適用開始は早くとも2026年以降になると予想されている。こうした中で、ベスタエアー執行副委員長は会議後の記者会見で、法整備には年単位の時間を要する一方で、AI技術は想像を超える速度で進歩していることから、法整備が実現するまでの対策として、業界関係者などの意見を聞いたうえで、企業が自主的に署名するAI行動規範の原案を数週間以内に取りまとめることを明らかにした。EUと米国のほか、カナダ、英国、日本、インドなど、AI行動規範への参加をできる限り幅広く募る方針だ。
現地報道などで注目されていた、経済安全保障における対中政策について、共同声明では中国の全面的な名指しを避けつつ、中国を念頭に非市場的政策や慣行へ対抗する用意があると言及するにとどまった。ブリンケン国務長官は記者会見で、EUはより強硬な対中政策を打ち出す米国と共同歩調をとれていないとする指摘に対して、両者の対中政策の立場は収れんしていることを強調。両者はともに、中国とのデカップリングでなく、デリスキング(リスク軽減)を目指していると述べた。
このほか、EUと米国は、電気大型車用のメガワット充電システムの共通国際規格で合意。半導体、第6世代移動通信システム(6G)、データ政策などの協議も進めた。また、米国インフレ削減法とその対抗策として打ち出されたEUグリーン・ディール産業計画(2023年2月3日記事参照)により対立していたクリーンエネルギー政策などを含む持続可能な貿易についても、協調して取り組むことを確認した。
(吉沼啓介)
(EU、米国)
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