中国、既存の1軒目向け住宅ローンの借り換えを推進

(中国)

北京発

2023年09月07日

中国人民銀行(中央銀行)、国家金融監督管理総局は8月31日、「既存の1軒目住宅ローン金利の引き下げに関する通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。1軒目の住宅購入に関する既存の住宅ローンについて、現行の金利水準での借り換えを進める。9月25日から実施される。

通知の主な内容は次のとおり。

  1. 既存の1軒目住宅ローンとは、2023年8月31日までに金融機関が貸し出した、もしくは契約を締結したが貸し出しにいたっていない住宅ローン、あるいは借入人の実際の住宅の状況が所在都市の1軒目の基準を満たす、その他の既存の住宅ローンを指す。
  2. 2023年9月25日から、既存の1軒目住宅ローンの借入人は貸出金融機関に対して、該当金融機関による新たな貸し出しによる借り換えを申請できる。新たな貸し出しの金利水準は、金融機関と借入人の自主的な協議により決定するが、ローンプライムレート(LPR)(注1)に上乗せする利率は、元ローン貸し出し時の所在都市における1軒目住宅ローンの政策上の下限を下回ってはならない。新たな貸し出しは、既存住宅ローンの返済にのみ使用されるが、引き続き住宅ローンとして管理される。
  3. 2023年9月25日から、既存の1軒目住宅ローンの借入人は貸出金融機関に対して、契約金利の変更協議を申請することができる。変更後の契約金利は本通知の第2条の規定に適合しなければならない。

上記のほか、金融機関に対してローンの用途に対する監督や、細則の策定などを求めている。

同日に中国人民銀行ウェブサイトに掲載された解説では、既存の住宅ローンの金利を引き下げることで、借入人にとっては消費と投資の拡大につながり、銀行にとっては繰り上げ返済が減少することで金利収入への影響を軽減することができるとしている。また、ビジネスローンや消費者ローンを用いた違法な借り換えを防ぎ、リスクを抑制することも目的としている。

中国政府は不動産市場の低迷を受けて、刺激策を相次いで発表している。同日に両機関は住宅ローンの頭金比率と金利の引き下げを発表した(2023年9月7日記事参照)。また、7月の住宅都市農村建設部長の発言(2023年7月31日記事参照)を受け、8月29日に広東省広州市、30日に広東省深セン市、9月1日に上海市、北京市が住宅ローン借り入れ歴を問わない(注2)との通知を発表した。

(注1)LPRは最優遇貸出金利の指標とされており、期間1年と期間5年以上の2種類が公表されている(2021年12月21日記事参照)。住宅ローン金利は期間5年以上のLPRを基準として決定される。現在の期間5年以上のLPRの金利は4.20%(2023年6月20日記事参照)。

(注2)これらの都市では、住宅ローン借り入れにあたり既に借り入れ歴があれば、同一地域に借入人名義の不動産がない場合も、2軒目の購入と判断されるなどの規制が取られていた。2軒目と判断されると、1軒目より頭金比率や住宅ローン金利が高くなるなどの措置が取られる場合がある。

(河野円洋)

(中国)

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